何故、こんなことを書き始めたかというと、宇宙でも、また一人の人間でも、他人がその真相を誤りなく伝えることは、至難の技であろう。私が本書で述べたことが正鵠を射たものかどうか、とうてい一人の人間がよくするどころか、あるいは迷惑至極なことかもしれない。翁のことはともかく、ともすると引き立て役にしつらえられて登場させられた諸氏に対してはお許しを乞わねばならないだろう。 ともあれ、私は、松永翁が、独力もって、終に電力王といわれるような巨大な事業を支配されるようになったのに、ファッショの台頭によってとりあげられるという、翁の後半生を近くに見ることができたもので、本書をしたためるのにふさわしい立場をもっているつもりである。宇佐美省吾
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