明美ちゃん基金50年 あの子は今3 考えられなかった将来に光 3つの先天性心疾患克服 杜艶琴さん(32) 「日本のこと子に伝えたい」 「私はみなさんに命を救ってもらいました。今は、この生活が、ずっと続いてほしいぐらい幸せです」流暢(りゅうちょう)な日本語でこう話すのは、平成13年3月に明美ちゃん基金の適用を受けた杜艶琴さん(32)だ。当時17歳だった艶琴さんは、「ファロー四徴症」「肺動脈閉鎖症」「巨大側副血行路」という3つの先天性心疾患を抱えていた。 中国の医療技術では治療が不可能だった。「艶琴」という名前は、「華やかで美しい音色を奏でるような人生を」と願い両親が名付けた。しかし、心臓病特有のチアノーゼにより、顔や手先は紫色に変色。「あと何年生きられるか分からない」。医師からは、そう伝えられていた。 「将来のことなんて、何も考えることはできなかったです」。艶琴さんは当時をこう振り返る。しかし、そんな状況は、基金の適用を受け、国立循環器病センター(現国立循環器病研究センター、大阪府吹田市)で行われた手術により大きく変わった。 「体がこんなに楽に動かせるなんて信じられない」。チアノーゼはなくなり、嫌いだった鏡をよく見るようになった。「絶対に中日友好に役立つ人間になりたい」。そう夢を語って帰国した艶琴さんは、日本語を猛勉強。日本語能力検定試験1級も合格した。 日本語の力を生かせる職には就けなかったが、就職先の工場で、夫、張晋晋さん(32)と出会った。人生を共に歩んでいける人が目の前に現れた。今では1児の母だ。長女の藩露ちゃんは現在9カ月。 「寝返りを打ったり、ハイハイを始めたり、いろいろ新しいことができるたび、うれしさが込み上げてきます。最近は、パパ、ママと言えるようになったんですよ」 藩露ちゃんがもう少し大きくなって、いろいろなことが理解できるようになったら、日本でどんなことがあったか教えてやるつもりだという。「今は、しっかり子供を育てることができるよう、頑張ります」。幸せがあふれそうな弾む声。艶琴さんの人生は今、華やかで美しい音色を奏でている。(豊吉広英) |