金州城 乃木希典 山川 草木 転(うた)た 荒涼(こうりょう) 十里(じゅうり) 風腥(なまぐさ)し 新戦場(しんせんじょう) 征馬(せいば) 前(すす)まず 人 語らず 金州(きんしゅう)城外(じょうがい) 斜陽(しゃよう)に 立つ
語意:荒涼=風景など荒れ果てて寂しいさま。腥=生臭いと同じ。みにくい、けがらわしい。月偏に生ともかく。征馬=旅で乗る馬。戦場のこと。 通訳:金州城外の山も川も、すっかり荒れ果てて物淋しい。十里にわたって新戦場は、血なまぐさい風が吹いている。進むはずの征馬も、なかなか進まないで、あまりにもむごたらしさに、言葉さえ出ないのである。金州城外の夕日に向かって立っている感無量であった。 参考:明治37年に長男を失った時詠んだもの本詩の原題は、「金州城作」である。日露戦争の激戦地(関東州の地)で戦死した勝典を詠んだものであろう。このとき希典は、第三軍の指揮にあたり、一月旅順占領に成功したと伝えられる。日本軍の死傷者は七万人に及んだ。