★「これからの世界文化は、アメリカの物質主義的なデモクラシーやソ連の共産主義より、東洋の哲理が必要ではないでしょうか」
トインビーは答える。
★「たしかに、西洋のキリスト教は戦闘的で寛容さを欠くから、方々で問題を起こしています」
日本について、松永は反省する。
★「日本は指導者たちが一方的に傾いて、冷静かつ科学的に物事を考える能力がないのが残念です」
★「それは、世界中どこでも同じではないでしょうか」
トインビーの言葉に二人して笑った。トインビーは第二次世界大戦に向かった日本にむしろ同情的あった。
★「お国の軍国主義は、西洋の圧迫に負けないために取ったものだと考えます。あれは犯罪ではなく、悲劇の始まりでした。ドイツの軍国主義の行方をもっと冷静に見つめるべきだったのです。」
二人はときの経つのも忘れて語り合った。トインビーは最後に自著「A study of
History=歴史の研究全25巻」の邦訳刊行を喜んで承諾した。日本にも来てほしいという松永の要請に、今すぐは無理だが、二、三年のうちに是非とも行きたいと答えた(1956年に訪日)
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