平成16年(2004)3月18日
       日本最後の山口県上関原発
           神を畏れぬ四代八幡宮嘩内地に建設

                         全国−の宮巡拝会世話人代表
                          入 江 孝一郎
                                  (社団法人日本移動教室協会理事長)

社団法人農山漁業文化協会発行の「現代農業56号」に「人間・自然破壊の原発に神の地
は売らず」という当然のことを訴えている文を見た。山口県上関町八幡宮林春彦宮司の書いたもので、瀬戸内海に浮ぶ長島、上関町の四代地区にある八幡宮である。わが国最後の原発といわれる上関原発建設をめぐり、20年の住民の是非をめぐる反対運動で、わずか百戸ばかりの村落に、住民同士の裁判が3件も係争中という。原発建設予定地の2割が八幡宮の境内地、原子炉予定地もその中だという。

 日本人は神域は畏敬すべきもので、ここに原発を建設するなど考えることも出来ないことである。戦後の経済優先は、多くの鎮守の森を消してきた。それは戦後だけでなく、明治39年(1906)8月10日「神社寺院仏堂合併跡地の譲与に関する件」いわゆる合祀令がだされ、柳田国男と共に日本民俗学の創始者南方熊楠が鎮守の森が消えると反対、日本で初めてエコロジーの立場から環境保全運動を展開した。

 日本六十八ケ国の国々に−の宮がある。創建以来、千五百年余の歴史の中に畏敬されて継
承されてきた。その大小の規模はあるが、それぞれ御神体山や古代を伝える樹叢・水・空気に神霊が存在する。『全国−の宮御朱印帳』を持って諸国−の宮巡拝する人が、いま、一万人に近づいてきた。理屈ではなく神域において神霊を感得し、神様にお願いするのではなく、唯々神様に感謝の気持が一杯になり、これは巡拝者が共通する。この国土に輝ける清浄な地が、宝石のごとく輝いているのが、日本の国土であり、地球の中で誇るべきことである。

 当然、上関町八幡宮林春彦宮司は、原発反対の立場を貫いてきた。神社地売却に同意しな
いために、神社本庁などの役員によって宮司の解任すべくあらゆる手段を用いて画策されているというが、あってはならぬこと、考えられないことが起きている。神様と参拝者の仲立ちを職業とする神職は、一木一筆のなかにまで霊的な生命を感じてほしい。それには己を消して神様に、理屈ではなくご奉仕することである。これは、全国−の宮巡拝をしている人であるならば、神様から体で感じさせられていることである。

 ここ十年余、全国−の宮のことから多くの神職の方とお会いした。一方、戦後、日本の未
来を荷なう学校教育の教師と仕事をしてきた。いま、日本の現状をみると学校教育界も神社
界にも蘇生の力を感じられない嘆かわしいものを感じる。しかし、−の宮という清浄の地、神の宿る地肌そのまま存在している有難い国である。理屈ではなく、全国−の宮百万人巡拝の波が起きたとき、それは遠くない日、神々の手はさしのべられると確信する。