霊魂は敵・味方・勝者・敗者の別なく尊ばれきた日本の武士道
Q:部下の戦死者を弔うのは分かるけど、敵軍の戦死者まで弔うのはどうしてなのか、亜紀にはよく分からないわ。
A: いい質問だね、亜紀。お前は元冠(げんこう)のことは知っているね。
その元冠のあと、北条時宗(ほうじょうときむね)が敵味方の霊を弔うために、鎌倉に円覚寺を建てたことや、楠正成(くすのきまさしげ)楠正成のことは教わっていないのか−正成は敵のために味方より立派な塚を建てたことは覚えておいて欲しい。
それから、明治になっても、日露戦争のあと、我が軍は自分の軍隊のものより先に、ロシア軍の慰霊塔を作った例がある。そのように、昔から日本には、敵軍の健闘を讃え、相手の戦死者を慰霊するという、武士道精神に基づいた伝統があることを、是非知っていて欲しいんだ。
人はすべて霊魂を持っているのだよ。敵・味方、勝者・敗者の別なく、霊魂は尊ばれなければならない。敵の死者を弔う心が生き残った者の義務であり、本当の意味での平和を願うことになるとお祖父ちゃんは思うよ。
松井大将は、まさにそのようなお気持ちで『興亜観音』を建てられたのだ。だから、お祖父ちゃんは松井大将のことを心から尊敬しているのだよ。
|