原爆行(げんばくこう) 土屋竹雨(つちやちくう)
怪光(かいこう)一餞(いっせん) 蒼昊(あおぞら)より 下る
忽然 地震(ちふる)い 天日(てんじつ) 昏(く)らし
一(いち) 刹那(せつな)の 間(あいだ)に 陵谷(りょうこく) 変(へん)じ
城市(じょうし) 台射(だいしゃ) 灰塵(はいじん)に 帰す
此日 死する者 三十万
生者は 創(きず)を被(こうむ)り 悲しみ 且つ 呻(な)く
死者は 茫々として 識(しる)る べからず
妻は夫を求めて 児は親を覓(もと)む
阿鼻(あび) 叫喚(きょうかん) 天地を 動かす
陌頭(がいとう) 血流れて 屍(かばね) 横に 陣(つら)なる
難に 殉じて 命を殞(おと)すは 戦士に、非らず
害を 被(こう)るは 総て此れ 無辜(つみなき) の民
広陵(ひろしま)の 惨禍 未だ曾って有らず
胡軍(てきぐん) 更に襲う 崎陽(ながさき)の 津(しん)
墻.(かき)は壊(こわ)れ 瓦は堕ち 人を 見ず
驕暴(きょうぼう) 更に 過ぐ 狼虎(ろうこ)の秦(しん)
君聞(きか)ずや 啾々(しゅうしゅう)鬼哭(きこく) 夜旦(よるあしたに)に 達(たつ)し
残郭(ざんかく) 雨暗(あめくろ)うして 青燐(せいりん)飛ぶを
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