平成17年(2OO5年)8月2日 火曜日       
 産経新聞は、「村山談話」延生の経緯などについて、村山富市元首相=写真=こ大分市内の自宅で聞いた.


戦後50年国会決議全文

本院は、戦後五十年にあたり、全世界の戦没者及び戦争等による犠牲者に対し、追悼の誠を捧げる。 また、世界の近代史上における数々の植民地支配や侵略的行為に思いをいたし、我が国が過去に行ったこうした行為や他国民とくにアジアの諸国民に与えた苦痛を認識し、深い反省の念を表明する。

 我々は過去の戦争についての歴史観の相違を超え、歴史の教訓を謙虚に学び、平和な国際社会を築いていかなければならない。本院は、日本国憲法の掲げる恒久平和の理念の下、世界の国々と手を携えて、人類共生の未来を切り開く決意をここに表明する。 右決議する。

村山富市元首相に聞く ・・・談話誕生の経緯 「理解」あちら側の話

⇒談話の狙いは
 「首相になってからアジアの中でしっかりとした信頼関係の基盤を作る必要があると考え、東南アジア、中国、韓国を訪問したが、過去の清算に対する不信があると感じた。戦後五十年の節目にけじめをつけて過去を清算し、方針を明示することが内閣に課せられた歴史的役割と考え、満場一致で閣議で決めて内閣の方針として出した」

⇒談話の発表で「戦後」に一区切り付けた思いはあったか
 「(語気を強めて)戦後は終わるもんか。一応のけじめをつけようという程度の話だ。戦後がこれで終わるなんておこがましいことは言わない」

⇒自分の中では区切りが付いたのか
 「歴史認識の問題でいろいろと誤解があってはいけないから、談話で一応けじめをつけようという気持ちはあったかもしれない。ただ、けじめがついたかどうかは別問題。過去に対する考え方を明らかにして、これからの方向を示し、皆さんの理解を得たいというだけの話だ。理解してくれているかどうかは、あちらのする話じゃからな」

⇒小泉純一郎首相は村山談話をもとに「不戦の決意」で靖国参拝をしていると鋭明している
 「談話とは関係ない。談話を踏襲しているから靖国に参拝するなんて小泉首相)本人の言うことであって僕は知らない。関知しない」


⇒近隣諸国と歴史認識をすり合わせることができると思うか
「歴史的にあった事実は否定できないが、事実への評価、解釈は国によって若干の違いがある。認識の一致はで
きないかもしれないが、違いは違いで理解しあうことが大事だ。理解がなければ信頼はできない。理解しあうことが
大事じゃ」

⇒中山成梓文科相が「従軍慰安婦という言葉はなかったと発言した。
「過去に政府が認めてきていることを否定しても仕方がない。軍が関与したとかは明らかになっている」

⇒中国の反日デモに日本は強く反発した
 「そりゃ反発もあるじゃろうな。それが偏狭なナショナリズムになって必要以上に対立をあおるということになってはよくない。だから理解しあうことが大事だ。なぜデモが起こったのかと」

⇒村山談話の影響についてどう考える
 「談話が災いして(デモなどが)起こるという見方をするのか。そんなことはない。アジアの歴史を共有し合うことができればもっと信頼関係の生まれるかもしれない。それに教科書問題や靖国問題が出てくると「過去に対する反省がない』とか、歴史認識が誤っているとか、いろんな議論になるわけじゃ」

⇒lその後の政権がいけないのか
 「そんなことはない。問題がなかったが、小泉さんになって問題が起こった。基本的にいけないのは靖国神社、
参拝だ」

                             
⇒A級戦犯」が合祀されているからか
 「サンフランシスコ講和条約十一条で日本は東京裁判受諾し、日本は国際社会に復帰して今日がある。それが間違いいだからとか、否定をしたら国際社会の信義に反する。小泉首相の)個人の心情は自由だが、首相というのは国代表だから、諸外国との関係に配慮する必要がある。参拝しない方がいい」

民難色に連立解消ほのめかす
 村山談話に先立つ平成七年六月九日、衆院は戦後五十周年を機に「謝罪・不戦決議」を可決した。与党三党が、新進党欠席のまま強行したもので、賛成者は議員数の半数に満たない約二百三十人にとどまった。自民党が社会党に譲歩し、「侵略的行為」や「植民地支配」の表現を盛り込むことを認めたためだ。参院も「謝罪・不戦決議」を模索したが、案文について与野党が一致せず、採択を見送った。参院選を翌月に控え、遺族会などが衆院決議に反発を強めたことも自民党を慎重にさせた。
 国会決議は、自社さ連立政権発足時、戦後五十年を契機に「国会決議の採択に取り組む」ことを明記した三党合意の履行を社会党が求め、政治問題化した。 決議案文で、社会党が自民党に提示してきたのは、「従軍慰安婦」 「強制連行」という文言のほか、中国や朝鮮半島という特定の国や地域を指したもので、自民党側は難色を示した。 調整難航に業を煮やした村山富市首相が、連立解消をほのめかす「重大な決意」を口にするなど、ドタバタ劇を繰り返し、両党の接著剤となっていた野中広務氏らが奔走、決議採択に持ち込んだ。

衆院は今夏、戦後六十周年を機に国際平和貢献への決意などを盛り込んだ国会決議を本会議で採択する方針だが、「侵略的行為」や「植民地支配」などの文言は使わない方向で調整中で、当時の国会決議の異様さを際立たせている。