大阪日日新聞『平成17年('05)10月26日

大阪ヒト元気録

「たくさんの人に箏の
音に触れてもらいた
い」と話す福川さん。
大会場でも自然な音を

エレクトリック箏奏者 
福川 みゆ香さん

2005/10/26
ほかの楽器との協演で視野拡大

 「無理にはりつめて大きな音を出すのではなく、お姫様が部屋の中でつま弾いていたような自然な音で、大きな会場でも箏(こと)の演奏ができたら」。そんな思いを実現するために全国でも珍しいエレクトリック箏奏者となった福川みゆ香さん(46)は今、ピアニストやベーシストなど、さまざまなジャンルの演奏家と協演し、箏の可能性を広げている。

大学で箏を専攻

 箏に初めて触れたのは六歳の時、祖母の箏を弾いたのがきっかけで、音楽というよりも音そのものに興味のあった少女時代だった。大阪音大に合格し、音楽学部器楽科で箏を専攻。卒業後も六年間、助手として同大学で箏を学び、教えた。

 助手時代の一九八四年に、NHK邦楽技能者育成会第三十五期生として東京に行った際に、エレクトリック箏と出合う。「エレクトリックといってもシンセサイザーのように電気的に音を合成するのではなく、箏それ自体の音を電気信号に変換して、アンプなどに送り出すもので、正しくはアコースティック・エレクトリックKOTOです」と、音へのこだわりを説明する。

 九一年から、阪神百貨店のイベントに携わったことでスタンダードジャズやシャンソン、カンツォーネなど、さまざまなジャンルに取り組み、視野を広げた。エレクトリック箏によって、野外や大会場、ほかの楽器とのセッションに、箏本来のアコースティックな調べで対応できるようになり、道が広がった。ピアニストの宮川真由美さんとのユニット「まゆみゆか」では、世界各国の音楽を演奏するライブ活動を行っている。

神社で奉納演奏

 〇三年、偶然の出会いから、全国にある格式の高い神社として知られる一宮の一つ長崎県の天手長男神社で行われた「壱岐ルネッサンス」で壱岐国一宮賛歌を作曲し、奉納演奏を行った。これを機に、〇四年には三重県の敢国神社で伊賀一宮賛歌を、〇五年には椿大神社で伊勢一宮賛歌を作曲・奉納演奏。

 十一月十三日には、奈良県の談山神社で「大和国多武峯賛歌」を、ベーシストで中国の弦楽器二胡の奏者でもある奥田稔さんと協演する。談山神社の「紅葉まつり」として行われるもので、開演は午後一時から。「ローマ法王ヨハネ・パウロ二世様との謁見(えっけん)やダライラマ法王様にしていただいた握手で、人との出会いを大切にすることを教えられました」と話す福川さん。これからも人との出会いをエネルギーに箏の音をたくさんの人に広げていく。