歴史の自縛 ・・戦後60年・・
 往き続けるGHQ宣伝計画
ひどくて、ひきょうな国
 占領期に連合国軍総司令部(GHQ)が実施した「戦争についての罪悪感を日本人の心に植えつけるための宣伝計画」 (ウォー・ギルト・インフォメーション・プログラム)は、今も形を変えて教育現場に生き続けている。

 東京・九段北の靖国神社にほど近いある千代田区立中学では、女性教員が指導し、「紙上討論」と称する授業を行っている。 三年生の授業では、さきの大戦について日本に謝罪と賠償を求めた韓国の大統領、慮武鉉の演説や、原爆、戦争責
任などを取り上げ、感想を書かせた。 生徒たちは、教員の指導と助言を受けて書いた感想文に「日本政府の人たちは頭、悪いんじゃないかと思いました。本当に賢い人は『真実を、きちんと徹底的に教える』と私は考えるからです」

「慮武鉱大統領、日本の過去の事実を教えてくださって、ありがとうございました」
「国のために死ぬのは右翼の人だけでいい」 「(天皇は)最後まで自分のことしか考えられず、心の弱さゆえか、『武力』のみでしか、人々を動かすことができなかった」−などと記している。

 教員自身は「大統領への手紙」という形式で「民族差別・女性差別・人権蹂躪の極致とも言うべき日本軍性奴隷いわゆる『従軍慰安婦』についても、(中略)私は、できる限り事実を提示する努力をし、生徒たちに考える時間を与えてきたつもりだ」とつづっている。

東京・瑞穂町のある公立中学校では今年二月、社会科の授業中に「中国の戦争は進歩的で、正義の戦争である」と主張する『毛沢東選集』に一部や、元朝日新聞記者、本多勝一の著書『中国の旅』を引用、日本人が中国労働者の心臓と肝臓を煮て食べたという信憑性が疑われているエピソ−ドなどを抜粋したプリントが配布された。

このプリント配った教員別のテスト形式のプリントで、日ソ中立条約について「北方の安全を脅し、南方への侵略を進め目的で結んだ」と記述。日本語ではなく中国語の口語とされる「三光作戦」 (焼き尽くし、殺し尽くし、殺しくし、奪いつくす作戦)を日本軍が華北地方の村々で行ったとした。 東京墨田区では、平成十六年度の教育委員会の事業として実施された中学一年社会の学習到達度調査テストで、南京事件について「武器をすてた兵士や女性・こどもを含む中国人が日本軍によって多数殺害されました」などと説明。
 
 そのうえで「中国の人々は日本の行動についてどう思っていたと考えますか。あなたが思うことを書きましょう」と出題し、生徒側から「ざんこくすぎる」 「人殺し」 「すごくひどくて、ひきょうな国だと思っていたと思う」ーなどの回答を引き出している。
一方、十年には、小学校社会科教科書の日本史部分について「ほとんど戦争に対する購罪のパンフレット」と雑誌で語った教科書調査官が、正当な理由なく更迭されている。 十二年度の中学歴史教科書の検定では、「ウォー・ギルト・インフォメーション・プログラム」を取り上げた扶桑社の教科書に、「一般的に広く認識されているとは言えない詩句を用いている」と検定意見がつきこの部分は削除された。同プログラムは、文部科学省にとって、触れられたくない過去なのだ。

 文芸評論家の江藤淳は著書『閉された言語空間』の中で次のように書いている。
 「いったんこの(GHQの)検閲と宣伝計画の構造が、日本の言論機関と教育体制に定着され、維持されるようになれば、(中略)日本人のアイデンティティと歴史への信頼は、いつまでも内部崩壊を続け、また同時にいつ何時でも国際的検閲の脅威に曝され得る」 六年前に自死した江藤の「予言」は、不幸にも現実のものとなろうとしている。      (敬称略)

 虞武鉱大統領が「3・1独立運動配念式典」で行った演鋭 
「日韓の関係発展には、日本政府と国民の真摯な(しんし)な努力が必要だ。過去の真実を究明し心から謝罪し、反省し、賠償することがあれば賠償し、和解しなければならない。これは全世界がしている歴史清算の普遍的な方法だ。私は拉致事件による日本国民の憤怒を十分に理解する。同様に日本も逆の立場に立って考えなければならない。強制徴用から『従軍』慰安婦問題に至るまで、36年間の数千、数万倍の苦痛を強いられたわれわれの国民の憤怒を理解しなければならない」(要旨


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