ベネデイクト」由来

 平和主義と教会改革
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ラッツィンガー枢機卿は、自らの法王としての名前を・「ベネディクト十六世」と定めた。ベネディクトという名は、六世紀にベネディクト修道会を創設した聖人に由来し、「祝福された」との意味(二十三人〉に次いで多い。どのような名を名乗るかで新法王が目指す方向性が見えることもあるといわれる。

たとえば、新法王が「ピオ十三世」という名を選んでいれば、保守的だった同十二世(在位一九三九-五八年)の路線を継承する意向がほの見えるし、「ヨハネニ十四世」という名なら、教会の刷新を図った同二十三世(同1958−63年)を手本に歩む可可能性-由化路線に軌道修正したーとがあるというわけだ。

そこで”先代”のベネディクト十五世の在位期間(1914−22年)を振り返ると、次一次大戦と重なり、同法王はその早期終結を目指す「平和プラン」を提唱した。これがウィルソン米大統領にも影響を与え、国際連盟創設の遠因になったとの見方もある。
2002年までバチカンの諸宗教対話評議会に在籍したイエズス会の平林冬樹さんに
よると、同十五世は@大戦でドイツが降伏した場合には、賠償金要求を放棄するよう英仏など連合国側に求めたA断交状態だったバチカンとイタリア政府との和解を模索し始めたB合理主義の広がりを受けて教会攻撃が強まる中、自由化路線に軌道修正したーといった特徴がある。

ベネヂィクト十六世をめぐっては「保守派の代表格」との見方が広がつているが、平林さんは「現代からみれば不十分かもしれないが、ベネディクト十五世は当時としては.革新的な道を歩んだ現実的な平和主義者だった。新法王がその名を継ぐということは、教会運営の面で改革に乗り出す可能性があることを示すものだ」と話す。その半面、「新法王であるベネディクト十六世は教義に忠実な人であり、『命を大切にする』という観点から性道徳や生命の問題では現在の解釈を堅持するのでは」と推測
している。.(佐藤貴生)
(情報源:産経新聞2005.4.21)