時代流動・・・難しいかじ取り

現実路線を継承
 
新法王は、司祭の結婚や女性の司祭就任に反対するとともに性道徳に関して厳格だった前法王側近の保守派。トルコの欧州連合(EU)加盟には明確に反対し、前法王が理解を示していたプロテスタントやロシア正教との「キリスト教一致運動」にも批判的な立場を取る「超保守派」だともいわれる。

 バチカン内部では、前法王の「長期政権」の後には「短期政権」が望まれる一方、急激な変化も回避したいという事情もあったとみられ、こうした条件を兼ね備えたラッツィンガー枢機卿が新法王に選ばれたのは「つなぎ役という内部の暗黙の了解があった」(関係者)との指摘もある。しかし、カリスマ性に満ちた前法王時代には表面化することも少なかった保守派への批判も噴出しつつあり、女性の役割拡大や避妊問題などで柔軟な対応を訴える「改革派」との和解や時代に即した改革はいずれ必要となる。新法王は「空飛ぶ聖座」といわれ多忙だった前法王時代以上に教会内部の問題に取り組む必要に迫られよう。

 また、前法王が就任した一九七八年当時は全世界の人口の約17,75%だったカトリック教徒は、2003年には約17%とわずかながら減少しており、信者数の維持・拡大も課題だ。
イスラム教やユダヤ教など他宗教との和解についても、ノーベル平和賞受賞者のユダヤ入作家エリ・ヴィーゼル氏は「新法王は反ユダヤ主義に立ち向かうぺきだ」と述べ、他宗敦にも理解を示した前法王の路線継承に期待感をにじませた。