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それは日本政府の会計制度の改革で、世界の主なる国で日本のように単式簿記をいまだに行っている国は、アフリカ諸国は別にして、我々の周りでは北朝鮮とフィリピン、そして太平洋の僻地パプアニューギニアだけだ。日本が世界を眺めわたせていないという典型的事例だ。日本国の会計方式は家庭での家計簿よりも機能力の乏しい大福帳の域を出ず、故にも本当のバランスシートが存在せず、複式簿記発生主義会計で初めて可能な、財政の無駄やごまかしを見破るために不司欠な財務諸表が存在し得ない。驚くことに政界に影響力を持つ立場の財界もそれを知らずにいる。あまりにことが根本的すぎて、かえって目にとまらなかったに違いない。

企業にとっては当たり前すぎることが、行政の世界では全く不間に付されているということを知る人がいない。いつか、私も創設以来参加している政財界の選ばれたメンバーたちでやっている『自由社会研究会』の例会で、元経団連の会長トヨタ自動車の総帥の豊田章一郎氏にその話をしたら、「そんな馬鹿な」と、怪訝(けげん)な顔で本気にしなかった。

それから暫くして今年の初め、当時はまだ経団連の会長だったキヤノンの御手洗氏にゴルフ場のレストランで行き合いその話をしたらこれまた信用せず、同席のどこか大銀行の頭取も首を傾げ、ようやく同じ席にいた日銀の前総裁の福井氏が、「いや、いわれた通り、国はまだ単式簿記のままですな」といって周りが納得したものだった。これは経済界の無知怠慢ではなしに、時には政治に注文もつけてきた経済界までが気づくことなかった、いわば日本の財政を狂わせ陥めてきた盲点のようなものだ,単式簿記の致命的欠点は多々あるが、例えば明治以来の単年度予算主義と相まって予算の繰り越し使用が難しく、万民が知っているように年度末に近い二、三月には支給されていた予算を今年度中に使いはたしてしまうためにやたら道路工事が行われる体たらくだ。

東京はかつての公認会計士協.会会長の中地氏と計ってかなりの予算をかけ、まず『機能するバランスシート』作りから始めて、、公会計の新しい複式簿記発生主義のシステムを作り無料で他の自治体に提供している。大阪はすでにそれに応えてその会計制度を一変させる。しかし国の役人のつまらぬ沽券のせいでか、地方自治体を統括するつもりでいる総務省は、財務省がどうやらその気になりつつあるのに、複式と称する実は中途半端な会計方式で済まそうとしているがこうした方法論がいかに無駄で危ういものかを、ことはきわめて専門的なので、幅広い国家的討論で判明させたらいい。

例えば税収を自治体の損益計算書に収入として計上しないという方式は、そこに属する国民にとってその県なり市が冗漫な赤字に晒されているといった誤解を招きかねない。いずれによ、現行の会計方式では無鰍やごまかしをあばくために必要な財務諸費はつくり得ない。

加えて国が法律で地方自治体に義務化させている外部監査を、なぜ国や公的な組合に課さないのか。教員組合費の政治的のための違法な支出や、人院に体よく守られている国の役人の数や給料の矛盾は第三者の監査によって初めて露呈される筈なのに。当然やるべきことをやろうとしない人間は、やはり幼稚としかいいようない。情報源:産経新聞H22.9.6