なって事業者に指示し、強制措置を発動する法体系になっていない。現状はガソリンなどを優先的に被災地へ送ることも、業者の判断に任せられているという。原子力発電所についても、事業者である電力会社が一義的に対応することになっており、国が責任を取る態勢になっていない。
コメなどについて、食糧法(主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律)は大幅な供給不足に陥った場合の緊急措置として、農水相が生産・販売業者に出荷地域や数量、価格などを指定できると定めている。しかし、実際に発動されたことはない。
公共のため強制措置も民主党が想起すべきは、平成16年、自民、公明両党との間で、大規模自然災害への対応も含む緊急事態基本法の骨子案に合意したことだ。骨子案は、国の責務として「国民の生命、身体及び財産の保護に万全の措置が講じられる」点を明確にし、首相の迅速な意思決定を確保する必要性を指摘するものだった。法制定には至らなかったが、共通の議論の土俵は事実上17構築されている。
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求められているのは、国家の危機を克服する法整備である。具体的には、被災者のための施設や食品などの物資提供を事業者に求め、拒否すれば強制的に提供させるなど、国民保護法の規定を準用すべきだ。
与野党は統一地方選延期などの震災対応で協議を重ねている。非常事態乗り切り決議を含め、国難を打開する歩み寄りが必要だ。天皇陛下が「皆が相携え、いたわり合って、この不幸な時期を乗り越えることを願っています」と国民向けのビデオでお言葉を述べられた。国家と国民の力を今こそ結集したい。
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