横浜特集(情報源:産経新聞H24.12.31神奈川)
ない。それでも学会がナポリに乗り込んだのは、4月末のイベントに招待されたからだ。イベントは漫画やアニメといった日本のサブカルチャーを紹介するもので、若者らが大勢集まる。それを聞き、「日本独自の食文化を紹介する好機で面白い」と"里帰り"を決めた。 日本からトマトケチャップとパスタ用のソフト麺を持参し、具材は現地調達。アニメの曲などが流れる会場に屋台を設けると、「これは何だ」とけげんそうな表情でコスプレ姿の若者らが寄ってきたという。 一部のイタリア人からは、「ナポリといえば海産物だ。ケチャップはおかしい」との指摘も受けた。しかし、多くの人は「おいしい」と笑顔を見せ、初日に訪れたナポリ市長も完食。2日間で約200食が売れ、まずまずの成果だった。 ××× 学会の設立は平成21年。横浜を愛する人たちが集まり、庶民の味・ナポリタンを通じた元気な街づくりを目指して、手弁当で名店の認定や実食リポートなどを続けてきた。田中会長や岩室晶子副会長に今後の展開を聞くと、「ドイツに進出し、ハムの代わりにフランクフルトを入れる」「ピザまんに対抗し、ナポリタンまんを売る」といったアイデアが次々に出てきた。実現の見通しは不透明だが、一時的な盛り上がりに終わらせず、息の長い活動を期待したい。 市文化観光局も、「学会の活動は横浜の魅力アップにつながっている」と好意的にとらえ、ドイツ進出にも興味を示す。ナポリ市長から林市長へのメッセージには、「近いうちにお会いできることを楽しみにしています」とあり、交流拡大につながる可能性もある。 年末の昼下がり、ホテルニューグランドのレストラン「ザ・カフェ」で元祖ナポリタンを食べた。上品な味で口の中はやけどせず、ナポリタンの知られざる原点に触れた気がした。来年もさまざまな取材に追われるのだろうが、温かい目でこの学会を見守っていこうと、口の周りを赤くしながら考えた。(小野晋史)=おわり |