|
ぼる。日本側は46カ国・地域で反論投稿を行ったほか、インタビューに際しても中国側と同分量での出演を求めている。こうした日本の努力によって「アジアの国々は安倍首相の防衛予算拡大を静かに歓迎してお0、むしろ中国の軍拡と海洋上の強固な主張をより懸念している」(英エコノミスト誌)という評価も目立ち始めた。 ある外務省幹部はいう。「以前は事を荒立てる不利益の方が注目されたが、現在は国際的に力を付けた中国が、日本に真正面の戦いを挑んでいる。もう『事なかれ』では済まない」3面に続く 一面から続く 研究者・外交官も「反日」総動員 「春節(旧正月)前というのに、次々と新しい仕事が降りかかってくる。うちの会社は人使いが荒い」1月下旬のある夜。北京市中心部の日本料理店で、中国の政府系シンクタンクに勤務する日中関係史の研究者は、焼き魚を箸でつつきながらつぷやいた。 店内の大型テレビは「安倍晋三首相のダボス会議における発言を批判する討論番組」を流していた。この研究者の同僚がゲスト出演し「今の日本は大変危ない方向に向かっている」などと口角泡を飛ばしていた。 結論ありきの指令 昨年12月 26日の首相の靖国神社参拝後、研究者が所属する部署は当局から「歴代日本首相の靖国参拝の比較」「靖国参拝に関する日本世論の変化」「神道が軍国主義思想に与える影響」といった複数の研究プロジエクトが与えられた。 締め切りまで時間が少なくみんなで手分けして執筆しているという。研究者は「これで旧正月は休めなくなった」とぼやき、「昨年は本当に忙しい一念だった」と振り返った。 昨年の年初は尖閣諸島の歴史的経緯、次は沖縄の帰属問題、年末になってからは靖国関連の仕事が与えられ、日中関係の変化に伴い、研究テーマも次々と変更されたのだという。 2012年11月に発足した習近平指導部は、胡錦濤前政権と違って日本との対決姿勢を強めた。日本を論破するために、この研究者のような日本問題の専門家の重要性が高まり、仕事が急増したのだ。 ただ、中国の学者による国際関係や歴史問題に関する研究は、事実関係より政治目的が優先され、着手する前に結論が出ているのがほとんどだといわれる。例えば、中国の指導者が日中戦争中の南京事件の死者が30万人と発言すると、その後、中国の研究者がいくら研究を進めても違う数字は出せなくなる。先行研究をわざと無視し、都合のいい史料だけを引用する中国の学術論文は中国国内だけで通用するといわれる。 このため、中国の学者が歴史や領土問題でいくら新しい成果を出しても、国際社会ではほとんど影響力がない。「国内向けのパフォーマンスにすぎない」と指摘する声もある。首相の靖国参拝はまた、軍事科学院などの軍系シンクタンクに所属する専門家のメディアにおける露出度を急増させもした。 各テレビ局は連日のように軍事番組を流し、自衛隊が保有する戦闘機、護衛艦の性能分析や中国軍との比較も行われている。軍事専門家らはしばしば「日本との戦争勃発の可能性」などに言及している。 国内向けアピール 世界中に駐在する中国の外交官も忙しくなった。中国外務省は昨年末から、各国に駐在する外交官を総動員し、世界規模で安倍首相を批判するキャンペーンを展開中だ。韓国やベトナム、マレーシアなどアジア各国をはじめ、米国、英国、ドイツなどの主要国、マダガスカルやコンゴ、エチオピアなど地理的にも歴史的にも日本とほとんど関係のない国々の大使らも、この宣伝活動に参加している。 もっともこうした大々的な日本批判に対し(戸惑いを見せる欧米の外交官は少なくない。北京駐在のある欧州主要国の大使館員はこういぶかる。 「中国は、日本とも良い関係を維持したい私たちを無理矢理にトラブルに巻き込もうとしている」実際、習政権が国内外で展開する大規模な反日キャンペーンは(実際に日本外交に与えるダメージはほとんどないとの見方もあるぐらいだ。 共産覚筋は「日本の首相の靖国参拝は、日中関係の問題であると同時に、中国の国内問題でもある」と指摘し、その意味を説明する。「中国政府が日本に強い姿勢を示さないと、国民による政府批判が高まりかねない。内政で成果を挙けられない習政権は、一連の派手な抗議を通じて、自身の対日強硬姿勢を国内にアピールする目的がある」 「反日」は中国の構造的な内部矛盾の反映であるならば、日本が靖国で譲歩すれば収まるという性質のものではないことになる。 |