夢の資源 技術確立手探り  コスト削減、環境への負荷課題
メタンハイドレート掘削開始


独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)が15日に愛知県渥美半島沖で世界初となる海底掘削を始めた「メタンハイドレート」は、日本を囲む近海に豊富に埋蔵されている。安定的な供給が実現すれば、資源小国ニッポンにとっては、"夢のエネルギー"となる。ただ、採掘技術が確立されていないうえ、大幅なコスト削減による採算性向上も不可欠だ。環境への影響も未知数で、乗り越えるべき課題は多い。(1面参照)


メタンハイドレートは、都市ガスなどに使われるメタンが低温高圧状態で水分と結ぴ付き、結晶化した氷のような物質。火を付けると結晶内のメタンが燃焼することから「燃える氷」とも呼ばれる。

永久凍土の地下深くや深海に埋蔵が確認されており、採掘して結晶からメタンガスを取り出せば、都市ガスのほか、火力発電向け燃料として使用することができる。

日本では平成13年から本格的な採掘計画に着手。JOGMECなどが20年にカナダで凍土からの採掘に成功した。

今回は愛知県沖から和歌山県沖にかけての東部南海海域で海底採掘の試験を開始。政府は30年度の商業生産を目指している。

経済産業省によると、東部南海海域のメタンハイドレートの埋蔵量は、国内の天然ガス使用量の十数年分にあたる約1兆立方m。北海道周辺や新潟沖も合わせると、日本近海の総埋蔵量はガス使用量の約10OO年分に相当する計7・4兆立方mに上ると推計されており、日本の新たなエネルギー源として「大きな司能性を持つ」(枝野幸男経済産業相)と期待されている。

ただ、深海に眠るメタンハイドレートを効率的に掘削する技術の確立は手探り状態だ。採掘コストは同量の天然ガスを輸入する場合の「5倍近くに達する」(経産省関係者)との見方もある。開発事業者の利益や輸送費を含めれば、他のエネルギーに比べさらに割高となる。

また、メタンガスは二酸化炭素(C02)に比べ地球温暖化の効果が20倍近いとされており、採掘中に漏れ出せば、地球環境に大きな負荷をかけることになる。石油や天然ガスなどエネルギi資源のほとんどを海外に頼る日本にとって、メタンハイドレートヘの期待は大きいが、確実に商業生産が見通せる段階にはなっていないのが実情だ。