「切れ味鋭い和包丁 素晴らしさ海外に伝えたい」 堺の刃物鍛冶第一人者 榎並正(えなみただし)さん(52〕 ニューヨークの日本政府国連代表部大使公邸で今月上旬、大阪・堺の和包丁の累晴らしさを紹介するイベントを開催した。全米9カ所で18日まで、他の職人と鍛冶や銘入れを実演する。 江戸幕府に重用された鉄砲鍛冶、榎並屋勘左衛門の流れをくむ刃物鍛冶の第一人者。堺の鍛冶師や銘切り師7人で作る「小鍛冶会」の代表も務めている。 洋包丁との違いについて「切れ味が違う」と強調する。干度以上に焼いた刃の原型を丹念にたたくことで分子が変化し、大量の機械生産と異なる高性能の刃物に仕上がるためという。 「和包丁で刺し身を切った場合、表面はザラザラせずツルツルする』水分が出ず、うま味も閉じ込められる」。後でソースで味付けすることが多い外国の料理と違い、「素材を生かす和食に和包丁は不可欠だ」と語る。 日本の料理人が使う和包丁の9割は堺の和包丁といわれる。南蛮貿易で日本にタバコの葉がもたらされ、それを刻む堺の「タバコ包丁」に徳川幕府が「堺極」の刻印を付して専売、その切れ味と名声が日本全国に広がったためだ。 名品を生み出す自らの鍛冶工場には、「南米チリなど海外から見学者が来るようになった」という。和食が昨年、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に指定されるなど、世界で注目されていることと無縁ではない。 「52歳ながら、まだ〃若手"といわれる」と業界の後継者育成には頭を悩ませているが「切れ味鋭い本物の和包丁の素晴らしさを海外に伝えたい」と気合十分だ。(ニューヨーク黒沢潤、写真 |