対馬が危ない下 生き残りへ苦渋の”歓迎”

■強い島民の孤立感
 「対馬は何県?」。こんな問いに「長崎県」と即答できる日本人は何人いるだろうか。「福岡県」と答える日本人も結構多い。 対馬市議会の国境離島活性化特別委委員長の作元義文市議(58)はこう言う。 「対馬は行政圏は長崎だが、経済圏は福岡。区分けが中途半瑞なうえ、県庁所在地の長崎まで行くのに往復2万5000円もかかるから、対馬の人間にとって、本土はますます遠くなる。本土の人も、交通の便が悪いこともあり、年々対馬から遠ざかっていく。対馬の存在感は薄い」 「福岡と対馬をむすぶ連絡船も、値上げをするところもあれば、便数を減らすところもあり、ますます距離が広がっていく」 聞けば聞くはど、本土と対馬の距離を感じる。

 作元市議は島民の思いをこう代弁する。 「島民は、日本から見放されていると感じ、孤立感でいっぱい。だったら、少々のことには目をつぶってでも韓国と仲良くすればいい。福岡からは約130`あるが釜山まではわずか50`だから親近感がある」

対馬は今、島民の心の隙間を狙うかのように不動産の買い占めに奔走する韓国資本と、怒涛のように押し寄せる韓国人観光客に右往左往するばかりだが、それでも韓国人、韓国資本を受け入れざるを得ない大きな課題を抱えている。

 
■経済悪化、過疎に拍車
 対馬は、南北約82`、東西約18`の細長い島だ。89%が山林に覆われ、耕地面積はわずか1・4%。平成17年の国勢調査によると、第−次産業の林業、漁業が21・1%を占めた。だが、林業は価格の低迷で、漁業も燃料費の高騰や価格安などで危機的な状況に追い込まれている。

 作元市議はこう嘆く。「漁船の重油は今、1g130円もする。60円を超えると採算が取れない。19トンのイカ釣り船の場合、−回に2000g積んで3日で使い切る。燃料費だけで26万円もかかるから−日に10万円の水揚げをしないと、燃料費も出ない。それにイカの卸値は、20匹で2000円ぐらい。これから燃料費や氷代を差し引くと手取りは500円ほど。勘定が合うはずがない」 財部能成市長(50)は対馬の経済状況をこう説明する。

 「昭和28年に公布された離島振興法で、港湾整備や道路整備などの公共事業が増えたため、潤っていたが、小泉改革で、公共事業が削減され建設業は倒産が相次いだ。水産業も水揚げ高は大きかったから、地域に金が回り、シャワー効果があったが、今は燃料費が上がり、船を出せなくなっている状況だ」 経済状況の悪化は島の過疎化に拍車をかけている。働き場所がないため、毎年1000人前後が離島、一時は7万人あった人ロも年々減少し、今では3万7117人(今年7月現在)と、激しい勢いで過疎化が進んでいる。しかも、減った若年労働者は各地区に2人いるかどうか、それも50代だという。過疎化については、出稼ぎに出ている島民も多く、実際の人口は、言われている数よりさらに3、4000人は少ないという声もある。
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対馬が危ない  "防人の島新法"を望む声

 
■韓国は経済起爆剤
 生き延びるためにはどうすればいいか。浮上したのが、歴史的にも交流のある韓国からの観光客の誘致だった。 市は、17年度から19年度まで、県と共同で、厳原ー比田勝間のシャトルバス代として、−人当たり2330円の補助まで出している。同地域再生推進本部によると、その額は、17年度が456万2000円、18年度が481万8000円、19年度は850万円にのぼった。韓国人観光客の歓心を買うため、税金で交通費を補填したことに反発の声が聞かれるが、その是非は別として、それほどまでに韓国に依存せざるを得なかったということだろう。

 対馬観光物産協会総代の高雄武保さん(83)は「韓国から観光客が来てもらわないと困る。雨だれが垂れる程度でも、韓国との交流は対馬の経済浮揚につながる」と期待感を隠さない。

 厳原町のホテル経営者が「それぞれ文化が違うのだから、マナーが悪いといっても仕方がない。それより、−日−万円でもいいから落としてもらったほうがいい。以前は絶対に韓国人は泊めないと言っていたホテルも背に腹は代えられないのか、受け入れる数が増えてきている。生き延びるには、韓国人を受け入れるほかないのです」と心の内を吐露したが、それは、多くの島民の共通した思いだった。

 もちろん、島民の間には、公共事業に頼りすぎ、国内向けの観光行政を怠ってきたため、そのツケが回ってきたと、行政当局を批判する指摘もある。 だが、もはや、責任の所在を追及している段階ではない。国家の要衝が韓国に侵食されていく。インタビューをしたほとんどの島民は、生きるための苦渋の選択と危機感のはざまに立たされていた。

 
■ようやく危機感台頭
 こうした状況に対馬市もようやく目が覚めたのか、危機感を強めてきている。 財部市長は「少なくとも国境に面した島については、安全保障の点からも外国資本による不動産買収を認めない除外規定など、実効支配につながることを防ぐ手だてを設けるべきだ」 「日本人の国境に対する感覚は極めて希薄。対馬の資源を生かした新たな産業を興すなど、国境に面した島を守る施策をとるべきだ。それが国境を国土として国が守っていくことになる」と”防人の島新法”の成立を訴える。 駐留する自衛隊の増強も一つの手段だ。本土に住む日本人が当事者意識を持って不動産の買収に乗り出し、買い占めに歯止めをかけるのもその方法だ。対馬の特性を生かし、海洋学などの教育施設を造ることもありうる。

 対馬市では、新法の素案作りを始めたが、対馬問題は単に対馬だけの問題にとどまらない。国家防衛は、常に最悪の事態を想定しなければいけない。 島民からはこんな声が聞こえてきた。 「韓国によるリゾート化は、密航組織に利用される懸念があるうえ、有事の際にはゲリラの潜入さえ可能にしでしまいかねない」韓国資本による対馬攻勢は激しいスピードで進んでいる。残された時間は少ない。
  (編集委員 宮本雅史)

韓国からの観光客誘致のため、町の地図にもハングルが大きく併記されている


風光明媚(めいび)な対馬。経済不振、過疎化でかつての活気がすっかり失われつつある。島民の”心の隙間”をつくかのように激しい韓国パワーによる攻勢がつづき、国の安全保障、領土保全上、危険な事態に陥っている

自民議員集団
                 
28日に緊急会議  「対馬深刻 看過できず」


 長崎県対馬市で不動産が韓国人に買い占められている問題で、自民党の議員連盟「真・保守政策研究会」(中川昭一)会長、70人)は事態を重視、研究会議長の島村宜伸衆院議員は22日、「離島問題等固有の領土保全緊急会議」を28日に開催、同問題についての検討を提唱することを明らかにした。 島村氏は「マスメディアの報道が総選挙一色になっている中での産経新聞−面トップ記事『対馬が危ない!!』は衝撃的でした。対馬問題に関しては以前からいろいろ問題が指摘されてきましたが、ここまで深刻な状況になっていたとは思いもよりませんでした。尖閣・竹島・北方領土問題など離島問題は、国家主権にかかわる大問題です。古代からのわが国の領土である対馬まで外国の勢力下になるような現状は、政治家として看過できることではありません」としている。

 対馬問題については、麻生太郎首相が「土地は合法的に買っている。日本がかつて米国の土地を買ったのと同じで、自分が買ったときはよくて、人が買ったら悪いとはいえない」などと述べているが、首相の説明に異論を唱える政界蘭係者も多い。