救援活動に密着
「これから放射線を測定する」。午前5時、神奈川県綾瀬市の厚木基地。大きな倉庫内で放射線測定器を持った隊員に全身を計測された。福島第1原発の放射能漏れ事故を受けた措置で、簡易測定器を常時身につけることも指示された。

「ここだ。ここで降ろせ!」。午前5時半、米海軍の輸送機が並ぶ駐機場では、慌ただしく動き回るフォークリフトに隊員の声が飛ぶ。ミネラルウオーターや毛布、衣服などの支援物資が入った段ボール数十箱がリフトから次々と降ろされていく。

駐機場では輸送機「C-2」が離陸の準備に入っていた。5人の隊員が手渡しリレーで次々と段ボールを積み込む。ゴーグルと防音ヘッドホンのついたヘルメットを装着し、段ボールが積まれた貨物室に乗り込むと、朝日が顔をのぞかせた午前6時に離陸した。

激しい振動と騒音の中、輸送機は約1時間半で三沢基地(青森県三沢市)に着陸。「この任務に当たり、日本人の助けになれることを誇りに思う」。出迎えてくれた第5空母航空団ヘリコプター対潜飛行隊のペレラ・シル中佐(43)が、「友」「がんばろう日本」と刺繍された右腕のワッペンを見せてくれた。

「自分たちのやれることは少ないが、物資を被災地に持っていくと笑顔を見せてくれる」と誇らしげだ。救援活動の中核部隊は米海兵隊と米海軍。東北地方の太平洋側に艦船を展開している。第7艦隊によると、救援活動には約1万8280人が従事。艦船19隻と航空機約140機で物資を被災地に届けている。雪が舞う滑走路では、隊員が懸命に除雪作業に当たっている。

沖合の揚陸艦との間を往復する輸送機やヘリが離着陸できなければ、それだけ支援物資が被災地に届くのも遅れてしまう。ヘリコプタi対潜飛行隊に所属する上枝1等兵曹(34)は、「トモダチ作戦」について、「言葉にならないほど感謝している。米軍人も日本人も同じ気持ちだ」と語った。

雪がやんだ午後5時ごろ、第7艦隊のドック型揚陸艦「トーテユガ」に向けて大型ヘリで三沢基地を離陸した。500人以上の米海兵隊員が支援物資輸送の任務に当たるトーテユガまで15分ほどのフライトだった。


テレビで仙台空港復旧に米軍と聞いた時に・・・・仙台空港はすぐに復旧するよ・・・・と直感し、家庭内でみんなに語ったが・・・想像以上の作戦が行われていたのには恐れ入っている。

精鋭部隊パラシュート降下
仙台空港迅速復旧   同盟力発揮の真価

「日本側はお手上げだった。だからノウハウを持ったわれわれが最初に復旧を手がけることにした」米空軍のブッカー大尉は24日付米軍準機関紙「星条旗新聞」でこう語った。大尉が所属する嘉手納基地(沖縄県嘉手納町など)の第320特殊戦術飛行中隊は16日、パラシュートで空挺隊員と高機動車ハンビーを宮城県松島町上空付近から空中投下した。

目標は仙台空港。津波によって泥とがれきに埋もれて復旧のめどが全く立っていなかった。同中隊が空から降下したのは空港にいち早く陸路で入り、再開作業を始めるためだ。夜間や悪天候をついてひそかに敵の背後にパラシュート降下するのを得意とし、アフガニスタン戦争も経験した精鋭部隊の本領発揮だった。

原子力空母ロナルド・レーガンも救援活動のため三陸沖に展開中だ。だが、いかに空母といえども大型輸送機は離着陸できない。物資の大量輸送を司能にする空港の重要性を熟知した上での判断があった。

3時間で滑走路
空港で米軍は自衛隊員らとともにがれきの撤去にとりかかり、3時間で大型輸送機C130が着陸できる長さ1500mの滑走路が完成。20日には、C130の3倍の積載量を誇る米空軍の大型輸送機C17が約40トンの人道支援物資を積んでアラスカから到着した。

米国防総省は現在、放射能漏れ事故を起こした福島第1原発の半径50マイル(約93キロ)圏内への艦船の接近を原則として禁じている。放射能汚染を回避しながら、戦地同様の思い切った作戦を展開する米軍。原発事故では、放射能被害管理の専門部隊450人の派遣準備に入った。

原子炉を冷却する真水を積んだ米軍2隻目のバージ(はしけ)船も26日午後、米軍横須賀基地を出港した。

大統領が後押し

米政府は持てる能力を日本側にフルに提供する姿勢を見せている。それを後押ししているのは、最高司令官のオバマ大統領だ。対応は素早かった。地震発生から5時間20分後の11日早朝には、「日米の友情と同盟は揺るぎない」との声明を発表。昼の記者会見では「日本には個人的なつながりを深ぐ感じており、悲痛な思いだ」と心情を吐露し、その後も8回にわたり日本の災害に言及し、日本を励ました。

世界各国で突出した米国の日本支援は、むろん人道的な側面だけではない。東アジア地域で、自由と民主主義という共通の価値観を持つ日本の復活が、地域の平和と安定に不可欠との認識がある。オバマ大統領が震災後、何度も日米同盟を強調するのはその証左だ。

米軍と自衛隊が一体となった救援活動を「有事で日米が同盟力をいかに発揮するのか、国際社会が注視している」(陸自幹部)のも事実だ。日本が米国の同盟国として汗を流した実績も米国を突き動かしている。

アフガン戦争ではインド洋で補給活動をし、イラク戦争では、どの国よりも早く「支持」を表明し、自衛隊をイラクに派遣。このとき、小泉純一郎首相(当時)はくしくも「有事に頼れるのは米国だけだから支持する」と語っている。

元国防次官補のジョセフ・ナイ米ハーバード大特別功労教授は「友人である同盟国日本への心配と、悲劇から立ち上がる日本人の力をたたえる気持ちから米国は支援している」と語った。(ワシントン佐々木類)
情報源:産経新聞 H23('11)3.27