はじめに
日本がだんだん悪い方向に向かっていると感じている人は多い。世論は基本的な大問題で分裂し、国は迷走している。親が子を殺し、孫が祖父を殺し、業者から一千万円を越える金品を受け取りながら、罪の意識をまったくもっていない官僚がいる。

頼りにしていたアメリカはあてにならなくなり、中国の政治的・経済的・軍事的存在感は「圧力」の域に達している。韓国などから絶え間なく非難攻撃されても、日本は必要な反論もできず、叩かれっぱなしの状態である。ときどき若者へのアンケート結果が発表されるが、日本の若者は他国の若者にくらべて未来に対する希望の度合いがうんと小さく、自国に対して誇りをもっている者もきわめて少ない。こうした日本に付ける特効薬はないのですか、という書き込みがときどき私のブログに入ってくる。

唐突のようだが、日本がいま直面している困難の多くは、「教養があれば解決できるたぐいのもの」である。それも「国際的な教養」があればなおいい。もし親殺しの少年や少女が、もっとユーモア感覚をもっていたら、自分がしようとする行為を「なんと愚かなことか」と笑い飛ばすだけの心の余裕が生まれたはずだ。ユーモアの基本というのは自分を突き放して眺め、他人の目で自らの愚行を笑えることから生まれるという。こういうことが教育の基本に盛り込まれていれば、社会のあり方は大幅に変わるはずだ。

ちょっとした苦痛にも耐えられないで、すぐに「切れて」しまう子供や若者がいる。だが「人間は辛いことに耐えるのが当たり前」という、どの国にも行き渡っている常識が日本社会にも浸透していれば、衝動的に殺人を犯す者の数は相当に減るだろう。・・・・・興味のあるかたは本書を読んでください。


・・・・とにかくこの本を読んで「あの人は洗練されている。話が具体的でおもしろい」といわれるような、カッコイイ人になっていただきたい。国際的なコモンセンスにあふれ、スマートな話し方ができる人が一人でも多くふえることが、日本の最大の安全保障になると思う。最も平和的に自らの身を守るのは、知的水準の向上しかないのである。この本があなたの強い味方であることを願っている。

    二〇〇七年十二月                                       著者