平成27年(2015年)6月5日金曜日
18歳選挙権 新有権者240万人 "政治の目"どう養う

選挙権年齢を現行の「20歳以上」から「18歳以上」に引き下げる公職選挙法改正案が4日、衆院で可決した。法改正によって生まれる新たな有権者は約240万人。早ければ来年夏の参院選から引き下けられる見込みだ。近年低迷が続く投票率の底上げにつながるとの期待は高いが、若者の政治への関心や候補者を選ぶ目をどう養っていくか、取り組むべき課題は多い。(1面参照)

「社会動かす」期待と不安

「未来の政治を作っていく、そのスタートを立派に切りたい」。公選法改正案が衆院の特別委員会で審議入りした5月27日、都内で開かれた18歳選挙権を考えるイベントで、自民党の逢沢一郎選挙制度調査会長は、集まった高校生、大学生らを前に改正案成立への意欲をこう語った。
「知識が足りない」

参加した都内の高校2年生、前田黎さん(16)は「18歳で選挙権を持つこことは賛成だが、投票に行くかどうかは正直まだ分からない。今は政治の知識が足りないと感じるが、どう勉強していいのかも分からない」と戸惑い気味。一方、都内の高校3年生、小宮大輝さん(17)は「なんとなくこの人でいいや、という感覚で投票はしたくない。選挙権を持つことは、『政治ってなんだろう』と調べるきっかけになる」と期待を寄せる。

日本の選挙法制定・改定の推移

選挙権引き下けは、昭和20年に25歳以上を今の20歳以上に変えて以来、実に約70年ぶり。新有権者約240万人は有権者全体の約2%にすぎない。それでも若者の政治参加を促すNPO法人「ライツ」の西野偉彦(たけひこ)理事は「少子高齢化の日本では高齢者の意見が政治に反映されやすい。若い世代の声をより政治に反映させていくためにも、18歳選挙権は必要になってくる」と主張。

ネット選挙の解禁で、政党や候補者にとっては、若者の動向は無視できない存在になるとの予測もある。一方で、政治参加に消極的な若者の姿も浮かび上がる。総務省の抽出調査によると、昨年12月に行われた衆院選の年代別投票率は、20〜24歳が29・72%で、全世代を通じて初めて3割を切る事態に。72・16%だった70〜74歳とは倍以上の開きを見せた。

上智大の田中治彦教授(教育学)は「今の若者は政治に関心はあるが、自分の発言や提案で社会の何かが動いたといった政治的体験に乏しく、自分が投じる一票が社会を動かす力になると実感しにくい」と分析する。

全高校生に副教材主権者教育の充実に向けて文部科学省は、高校生が政治参加など社会生活の幅広いテーマを学ぶ新科目を平成34年度にも設ける方向で検討してきた。だが、選挙権の引き下け議論が先行する形となったことから、まずは選挙の意義や制度の詳しい解説などが書かれた副教材をすべての高校生に配布する予定。

模擬投票といった体験型学習の充実も学校側に促し、新有権者の投票につなげたい意向だ。田中教授は「ネットの情報や候補者の言葉をうのみにせず、社会の問題を自分の問題として捉えた上で一票を投じる政治的判断力をどう養っていくかも今後は大きな課題となる」とも指摘している。