産経新聞主張    皇室の弥栄を考える機に

ご結婚50年
 
天皇、皇后両陛下がご結婚50年を迎えられた。皇室の歴史で、在位中に50年を祝われるのは昭和天皇と香淳皇后に次いでお二組目である。心よりお慶び申し上げたい。お二人が結婚されたのは昭和34年、日本が先の大戦による荒廃から立ち直り、高度経済成長に向かうころだった。皇后さま、当時の皇太子妃美智子さまはそれまでの皇室の慣例を破る「民間」のご出身で、天皇陛下とは「恋愛」によるご結婚だった。しかも結婚の儀の後の馬車パレードは、普及しかけていたテレビで全国に中継された。ご結婚が国民と皇室との距離を急速に縮めたことは間違いない事実だ。

 そればかりではない。この50年間、お二人は常に国民の生活や安全に心を砕いてこられた。即位後だけでも47都道府県すべてを訪間され、阪神大震災、新潟県中越地震など大災害のたぴに、被災地を訪ね、人々を励まされた。その一方、宮中祭祀を中心に、皇室の伝統の継承にも熱心につとめ、国民のために祈る姿勢を貫いてこられた。こうしたことが、どれほど国民を勇気づけ、日本人としての誇りを持たせたか計り知れない。日本がまがりなりにも戦後の繁栄を保ち続けられたのも、両陛下の力によるところが大きい。

 両陛下のそうしたお心に応えるためにも、今度は国民の側が皇室の将来の繁栄について、真剣に考えなければならない。両陛下はご結婚後、皇太子さまをはじめ、3人のお子さまと4人のお孫さまに恵まれた。平成18年には、41年ぶりの男子皇族として秋篠宮家に悠仁さまが誕生されている。だが若い男性の皇族が少ない現状では、皇位継承の将来に不安を残したままである。政府は小泉政権時代、女性天皇や女系の天皇も認める皇室典範改正案をまとめた。その後、悠仁さまの誕生もあって国会には提出されなかったが、そうでなくとも、125代にわたり続いてきた男系による皇位継承の伝統を破るものとして批判は強かった。

 伝統を守りつつ、弥栄(いやさか)をはかるには旧皇族の復帰など皇室の拡充を真剣に考えるべきだ。そのことは、過重な両陛下のご公務を軽減することにもつながる。政府も民間も一体となり、一刻も早くそうした検討を始めるべきだ。そのことがご結婚50年への何よりのお祝いとなるのだ。
<2009.4.10>