歴史戦 産経新聞平成26年(2014年)5月21日 第2部 慰安婦問題の原点 講義で「日本の蛮行」訴える韓国映画上映 広島大准教授 一方的に「性奴隷あった」「いつから日本の大学は韓国の政治的主張の発信基地に成り下がってしまったのか」広島大学で韓国籍の男性准教授の講義を受けた男子学生(19)は、ため息交じりに語った。一般教養科目の「演劇と映画」と題された講義。4月28 日、約200人の学生がスクリーンに投影された映像を見せられていた。 「日本刀で焼きごてをあてられた」「日本人が『朝鮮女性を強制連行したことはない』というから腹が立ってたまらないのよ」インタビューを受ける高齢女性は何度も「日本の蛮行」を訴える。韓国映画「終わらない戦争」(平成20年制作)。元「慰安婦」の証言をもとに構成された60分のドキュメンタリー映画だ。 「突然、2人の日本軍人が私を小さな部屋に押し込んだ。私が声を上けると、刀を抜いて鼻を刺した」衝撃的な"証言"が次々と登場する。学生はじっと映画を観賞するしかなかった。映画には、慰安婦性奴隷説を唱える中央大教授、吉見義明や、慰安婦間題をめぐり米国内で日本非難の先頭に立ってきた日系下院議員、マイク・ホンダらも登場する。 河野談話の説明なく 慰安婦募集の強制性を認めた平成5年の官房長官、河野洋平の談話。強制性の根拠とされた韓国人元慰安婦16人の証言は、信愚性の調査も行われなかった。准教授は上映前、こうした河野談話の問題点を説明することもなく、学生に「人間はありのままに語ることはできない。だが、物語の力、虚構によって、より真実を鋭く伝えることも可能だ」と話し、映画が「真実を伝えている」と強調した。 上映が終わると、「今日の授業は以上です」と告け、すぐに講義を切り上げた。「強制連行」の証言だけを示し、学生には議論の余地も与えなかった。講義を受けた学生らは「日本だけがものすごい悪いように映った」「映像内容がその通りだと素直に思ってしまった」と漏らしていたという。 男子学生は国立大学の授業として、慰安婦募集の強制性があたかも「真実」として伝えられたことに疑問を呈し、「何の説朋もなしに、あの映画を流すのは乱暴だ」と指摘する。 広島大学は「現在、事実関係を確認している。事実がはっきりしない段階ではコメントできない」としている。 議論の余地与えず 准教授の講義の狙いはどこにあったのか。「学生に議論の余地を与えなかったのではなく、講義の時間が足りなかった」取材に対し、准教授は釈明する一方でこう続けた。「従軍慰安婦、性奴隷はあった。事実だ。私は優れたドキュメンタリー映画の例として、『終わらない戦争』を学生に見てもらった」 河野談話は韓国で慰安婦の「奴隷狩り」を行ったと告白したものの、後に全くの虚偽だと発覚した吉田清治らの根拠なき「強制連行説」を下敷きに作成されたが、そのなかで大きな役割を果たしたのがメディア、なかんずく朝日新聞だった。(敬称略、肩書は当時)3面に続く 朝日「証言内容を否定」 1面から続く 「そもそも朝日新聞の誤報と、吉田清治という詐欺師のような男がつくった本(『私の戦争犯罪朝鮮人強制連行』)が、まるで事実のように日本中に伝わっていったことで、この問題がどんどん大きくなった」第2次安倍政権発足の約ーカ月前にあたる平成24年11月30日。日本記者クラブ主催の党首討論会で、自民覚総裁の安倍晋三は慰安婦問題について問われてこう指摘した。 ××× 首相就任前から慰安婦問題に熱心に取り組んできた安倍が朝日と吉田を名指ししたのには理由がある。吉田のデタラメな「韓国での奴隷狩り」証言を裏付けも取らないまま熱心に繰り返し取り上げたのも、事実と異なる慰安婦報道で問題を複雑化させたのも朝日だからだ。吉田証言は共産覚の機関紙、赤旗なども報じているが、朝日は突出している。 アヘン密輸にからみ入獄したこともある吉田を「職業的詐話師」と呼ぶ現代史家の秦郁彦が吉田と朝日の関係を調べたところ、朝日は慰安婦問題が注目されるようになった3年半ばからの1年間に、吉田を4回も紙面に登場させている。もちろん、それ以前にも何度か取り上げた上での話だ。 例えば3年10月10日付の記事(大阪版)では、吉田が「慰安婦には人妻が多く、しがみつく子供を引きはがして連行」などと語るインタビュー記事を載せている。だが、貧しく慰安婦のなり手に事欠かなかった時代に、わざわざ子持ちの人妻を連行する必要性があったというのか。 朝日は4年1月23日付夕刊の1面コラム「窓論説委員室から」では吉田の言葉を引用してこう書いた。「(朝鮮)総督府の五十人、あるいは百人の警官といっしょになって村を包囲し、女性を道路に追い出す。木剣を振るって女性を殴り、けり、トラックに詰め込む」「吉田さんらが連行した女性は、少なくみても九百五十人はいた」このコラムは吉田のことを「腹がすわっている」と持ち上けすらしているが、当時、朝鮮半島の地方では巡査はほぼ100%朝鮮人だった。 吉田は『私の戦争犯罪』を出す6年前の昭和52年に出版した『朝鮮人慰安婦と日本人』では、奴隷狩りで女性を集めたとは書いてはおらず、朝鮮人地区の女ボスの手配としている。ただ、朝日も徐々に吉田の話を疑間に思い始めたようで、強制連行や吉田証言に対する論調を変えていく。 平成9年3月31日付朝刊の慰安婦間題特集記事では、吉田についてこう書くに至った。「朝日新聞などいくつかのメディァに登場したが、間もなく、この証言を疑間視する声が上がった。(吉田が奴隷狩りを行ったと証言した韓国の)済州島の人たちからも、氏の著述を裏付ける証言は出ておらず、真偽は確認できな い。吉田氏は『自分の体験をそのまま書いた』と話すが、『反論するつもりはない』として、関係者の氏名などのデータの提供を拒んでいる」 結局、吉田証言を何度も紹介したことの非は認めず、「真偽は確認できない」とするにとどまり、訂正はしていない。 X×X 朝日の前主筆、若宮啓文は昨年9月に出版した著書『新聞記者現代史を記録する』の中で次のように振り返っている。「朝目新聞もこれ(慰安婦間題〕を熱心に報じた時期があった。中には力ずくの『慰安婦狩り』を実際に行ったという日本の元軍人の話を信じて、確認のとれぬまま記事にするような勇み足もあった」 今回、産経新聞が若宮に取材を申し込んだところ、多忙などを理由に「お受けできかねる」と拒まれた。朝日新聞広報部に一連の吉田氏を取り上げた記事について訂正する考えはあるか」と間い合わせると、書面で回答があり、前述の9年3月31日付の慰安婦間題の特集を挙けたうえで、こう続けた。 「吉田清治氏の証言について、弊社は特集ぺージで、証書の真偽が確認できないことを詳細に報じ、証言内容を否定する報道を行っています。歴史に関する証言報道は、その検証などによって新しい事実が判明した場合、その事実を伝えることが重要だと考え、そう努めています」 朝日の指摘する記事が、果たして「証言内容を否定する報道」といえるだろうか。それまでに繰り返し無批判に吉田を取り上け、国内外に間違った慰安婦像を広めてきた経緯と比較考量して、これで十分とはいえない。(敬称略) |