1面から続く 私はここでその是非を間うているのではない。しかしその本質的状況、つまり『主要矛盾』の中でかつては彼等に支配搾取されてきた途上国たちは保有する資源を盾にかまえたり、他の政治的立場を踏まえての己の利益を食欲に遂けようとしている。 そしてそんな彼等を、かつての宗主国はさらに巧みに利用しようとしてかかる。そうした関わりの中では他の外交と同様に友情とか博愛などというものは二の次の話だ。それがかつてよりも時間的に狭小となった今日の世界における国家同士の関わりの、かつてと全く同じ本質でしかありはしない。 しかし世界はかつてと違ってさまざまな面で変質してしまった。第一には情報が氾濫しいかに貧しく知的ならざる人間でも、情報の乱入によって自らの在る世界と他の世界との格差を知覚し、それが格差の超克への新しい願望、欲望を育み、さらにそれが新しい政治的エネルギーを育ててしまう。 一方歴史の推移の中で支配被支配を推進してきたそれぞれ異なる絶対神なるものも、『神』なるが故に博愛や友情を説かぬものはないし、同じ人間における格差を是とするものもありはしない。故にも他の神を奉じてきたイスラム教圏の人々を拒否する宗教原理はキリスト教圏にも在り得はしない。難民を拒否して阻むことは彼等の信仰の原理に背くことにもなるのだから。 ということで許容してきた価値観や習慣のいちじるしく異なる異教圏の人々の数がある限界を超えると、それへの違和感はある種の疎ましさや恐怖を育てることにもなる。今日ヨーロッパの国々に起こっている移民たちとの摩擦はどれも同じ心理構造によるものに違いない。 しかし結局どの国もそれを防ぎきれるものでもないだろう。なぜならこれは前述のように歴史の報復がもたらした必然であって、彼等に反発するキリスト教圏の白人たちが既得のものとして失うまいと願う安定や繁栄は過去の支配と収奪がもたらしたものであって、歴史はその公平な分配を求めて動いているとしかいいようあるまい。 世界一と自負しているアメリカの繁栄はかつては彼等が差別支配してきた黒人の奴隷の使役によって獲得されたものであって、アメリカは遅まきながら彼等に市民権も与え黒人の大統領を出すまでして歴史の報復に応えているではないか。 アフガンやイラクにおける戦闘でキリスト教圏の軍事力は、歴史の報復に対抗し決して彼等を制圧しきれまい。かといってイスラム教圏の人々が今のような試みで勝つとも言い切れないが。いずれにせよ現代のこの混乱は、地球は所詮人間全てのものだということを証すことになるだろう。 |
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