の本は、西郷隆盛、上杉鷹山、二宮尊徳、中江藤樹、日蓮上人のろ人の人物をとりあげているが、上杉鷹山については、ケネディ米大統領のエピソードを思い出す。日本人記者団から、日本で最も尊敬する政治家は誰かと質間されて、大統領が上杉鷹山と答えたというものである。鷹山の政治理念は、大統領就任演説の中の有名な、国家があなたに何をしてくれるかを問うのではなく、あなたが国家に対して何ができるかを自問してほしい、という国民への呼びかけと通じるものであった。
そして、その当時の日本人記者が「戦後民主主義」の教育のせいで鷹山を知らないという悲惨な状態にもかかわらず、ケネディ氏がなぜ上杉鷹山の本質を理解していたかといえば、私の推測では、内村鑑三の『代表的日本人』を読んでいたからである。国際化がますます進展する今後の世界において内村の国際性は高く評価される点であろう。娘のキャロライン・ケネディ氏が駐日大使であるのも、何かの縁である。
内村鑑三は、大正15年に軽井沢の星野温泉の若主人であった星野嘉助に、「成功の秘訣」10箇条を書き与えた。この3代目嘉助は現在、星野リゾートの社長として日本の観光立国戦略に大きな力を発揮している星野佳路氏の先々代に当たるが、その「成功の秘訣」の最後は「人生の目的は金銭を得るに非ず、品性を完成するにあり」という教えである。
「内村万札」に日本の品格
「金銭」の一番高額の紙幣の一万円札の肖像に、こういうことを説く内村鑑三がなるということは、金銭を日々使っているわれわれ日本人に「人生の目的は金銭を簿るに非」ざることを、絶えず思い出させることに他ならない。近隣諸国とは違う「品性」の高い国家を目指す日本にとって、これは大事なことである。
日本人初の金メダリスト、織田幹雄の肖像の入った二千円札もいいのではないか。いずれにせよ、紙幣の肖像の変更をすることによけ、日本人の精神の在り方を見直す機会が生みだせるであろう。(しんぽゆうじ)2014.6.18
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