解答乱麻
参議院議員 山谷えり子

「教育再生」止めてはならぬ
自民党の安倍内閣からスタートした教育再生の諸施策が、政権交代で次々と方向転換されようとしている。戦後5大長時間審議といわれた審議の末、教育基本法改正、教育再生3法の成立、学習指導要領改定、教員免許更新制や道徳教育の充実が図られた。全国学力調査も含めて、世論調査で7〜8割の国民が賛成した教育再生政策であった。

日教組の反対で43年間実施できなかった全国学力テストは、3年連続で実施され、成績が低迷していた各県で補習などの取り組みが始まり、地域間格差が縮む傾向にある。にもかかわらず全員参加型調査を民主党政権ではやめる方向にするという。始まったばかりの教員免許更新制は、先生の資質向上を図り、不適格な先生は教壇に立たせないようにして子供を守るものだが、これも民主党の支援団体の日教組の主張通りに廃止されるといわれている。

"無駄の撲滅"は大切だが、国民の共感を無視し、国会審議をせずに
「無駄」と断ずるのは独裁的ではないか。

教育再生担当の首相補佐官をしていた当時、私は日教組の幹部に「正直・親切・勤勉・チャレンジ精神・親孝行、日本人の美しさを教える道徳教育になぜ反対されるのですか」と尋ねたことがある。これに対し幹部の方は「教えれば"ザ価値観"の押しつけになる」。すなわち思想・良心の自由をうたった憲法に反すると主張された。これは教育放棄宣言ではないか。年齢にふさわしい価値観を伝えるのは教育の基本である。価値観を教えられない子供たちは冷笑的・虚無酌に生きるしかなくなる。

福沢諭吉の『学問のすすめ』は学ぶことが生き方の質を決定するとして、学ばなければ「傍の富める人を怨み、…独立の気力なき者は国を思ふこと深切ならず」と記した。各地を回ると道徳の副教材「心のノート」が回収されているという報告や過激な性教育が再び始められているという話を聞く。「すべての子供に高い基礎学力と規範意識を」「地域間格差をなくす」という教育正常化運動は、政権交代があっても変えるべきではない。

学習指導要領改定に伴い中学・高校の教科書は、現在まさに執筆中であるが、政権交代で内容がどう書き換えられていくか心配である。というのも北海道教職員組合はすでに
「竹島(独島)の領有権」について「歴史的事実を冷静にひもとけば韓国の主張が事実にのっとっていることが明らか」という資料を作成するなど、新学習指導要領を無視する動きが出ている。

民主党は党の政策集に「学習指導要領の大綱化」を掲げている。これは現場に学習内容を大幅に任せることを意味する。学校現場には
「君が代は憲法違反の歌」として歌わないよう指導する先生もいる。自己肯定感や主権者意識の喪失、反日感情を持つ子供を増やしてはならない。鳩山由紀夫首相は「国旗、国歌は大事」と国会で答弁された。政権交代後も教育は政治的中立を保ち、イデオロギーから自由であらねぱならない。
(情報源:産経新聞H21('09)11.16)