青色LEDは、実用に耐える技術の開発は「20世紀中は困難」といわれていた。赤崎氏は松下電器産業1(現パナソニック)に在籍していた昭和48(1973)年、青色LEDの開発に必要な窒化ガリウムの研究を始めた。

名古屋大教授だった60年にサファイアを基板に使う手法を考案し、困難とされていた高品質の結晶を得ることに成功。平成元年に窒化ガリウムの半導体の要素技術であるPN接合にも成功し、青色LEDの技術基盤を確立した。

天野氏は名古屋大で赤崎氏に師事し、高品質結晶を作製する実験に成功した。一方、日亜化学工業(徳島県阿南市)の研究者だった中村氏は、基板上から窒素ガスを、横からは有機金属ガリウムとアンモニアガスを流す独自の「ツーフロー」と呼ばれる結晶育成法を開発。5年に実用化レベルの高輝度青色LEDを初めて製品化した。

青色LEDの開発で赤、緑、青の「光の三原色」が半導体光源で出そろいフルカラー化が可能に。光ディスクや信号機、照明器具などLEDの利用分野は飛躍的に拡大し、電子産業や情報技術(IT)の発展に大きな影響を与えた。

授賞式は12月10日にストックホルムで行われ、賞金計800万スウェーデン クローナ(約1億2千万円)が贈られる。


長寿命・低電力暮らし進歩

スマホ、ブルーレイ、ウインカー、植物工場…

照明、スマートフヵン、ブルーレイディスク…。ノーベル物理学賞の受賞につながった青色LEDは、電機製品の飛躍的な発展を促した。われわれの生活を大きく変えた発明は、消費電力が少なく寿命も長いという特性を生かしながら、さらに可能性を広けつつある。

夜の首都を優しい光で照らす東京スカイツリー。ライトアップの照明はすべてLEDだ。照明にLEDが使えるようになったのは、青色LEDに黄色の蛍光体をかぶせることで白色化に成功したからだ。

LED照明は、トーマス・エジソンが発明した白熱電球や、その後の蛍光灯に次ぐ"明かりの革命"をもたらした。消費電力は白熱電球の約20分のーで、寿命は約100倍とされる、スマートフォンにも、画面を表示する液晶ディスプレーのバックライトにLEDが使われている。

同様に青色LEDの原理を応用した家電のひとつがブルーレイディスク再生機だ。赤色LEDをレーザー読み取り装置に応用したCDやDVDに比べ、青色の光は波長が短く、4倍以上の情報量が伝達できる特性がある。さらに、競技場などの大型ディスプレーや自動車のウインカー、ブレーキランプなどの車載照明、普及が進む植物工場用の照明などにも使われている。

今後もさまざまな用途で用いられていきそうだ。富士キメラ総研の調査によると、平成25年のLED関連
の世界市場は1兆5729億円。32年には、264倍の3兆7588億円になると予測している。LEDを使ったス
マートフオンや自動車市場を含めれば、経済効果は計り知れない。