発言力得るために必要
○軍事的な均衡が必要
Q: 今なぜ核武装が必要か
Ans: 「国際政治を動かす発言力を確保するためだ。国同士の交渉は、軍事的な均衡があって初めて平和的な外交交渉が可能になる。均衡がなければ、結局、相手の言い分をのまざるを得ない。おそらく今後、核兵器が使用されることはない。使えばお互いが破滅するからだ。つまり、核は使う(攻撃)ために持つのではなく、抑止、防御のために必要なのだ。日本以外の国のリーダーの多くはチャンスがあれば、『核を持ちたい』三流国の仲間入りをしたい』と考えているだろう」
Q: 昨今の中国の傍若無人な態度も軍事力の増強が背景にある
Ans: 「20年前なら自衛隊は中国の海軍、空軍などまったく問題にしなかったが、現在、物理的な戦闘力は互角か、中国が勝っているかもしれない。それでもまだ日本を侵略するまでの能力はないが、これも中国が空母を持つと変わる。中国が侵略能力を持つと、日本は今以上に脅かされるだろう。『それに備えよ』という声が政治の世界で起きないのは理解不能だ」
Q: 中国の台頭や北朝鮮の脅威に備えるのに、アメリカの核の傘だけで十分という声も根強いが
Ans: 「多くの国民や政治家さえも誤解しているが、日米同盟はあくまで『抑止』のためのものであり、有事の際にアメリカの自動参戦を保証するものではない。例えば、尖閣諸島で中国とイザコザが起きたときに、アメリカは本当に出てくれるだろうか?しかもかつてのように、アメリカの絶対的な抑止力はなくなっている。今後、軍事力を削減し、海外の米軍を撤退する動きも加速するだろう。そんなとき、日本は自衛隊を増強し『自分の国は自分で守る』体制をつくることが必要なのだ」
○世界はもっと"腹黒"
Q: ー日本には核の論議をすること自体が「悪だ」という雰囲気がいまだにある。
Ans: 「すでに核を保有している国は、発言力確保のためにこれ以上保有国を増やしたくないから、表面上、核廃絶や削減を打ち出したり、裏で反核運動に火をつけたりする。日本はこうした『情報戦』に負けているのだ。また、核は『持たない方が安全だ』という意見も聞くが、これも世界の常識と大きく違う。自分さえ悪いことをしなければ、相手も悪いことをしない、なんてことはあり得ない。世界はもつと『腹黒』だ」
Q: 核武装に必要な時間は
Ans 「国のリーダーの強い意志さえあれば、3〜5年で司能ではないか。東アジア情勢が不安定な今二そ核武装を言い出すチャンスだし、アメリカも説得しやすい。核武装の意志を日本が示すだけでも抑止力は高まるだろう」
田母神俊雄氏
<たもがみ・としお>元航空幕僚長。昭和23年、福島県生まれ。62歳。防衛大学校卒。航空自衛隊
に入隊し、統合幕僚学校長、航空総隊司令官を経て、平成19年、航空幕僚長に就任。20年10月、民間
の懸賞論文に応募した作品が、政府見解と対立する、とされ解任。
新著に「田母神国軍」 |
今はその時期ではない
●日本は孤立する
Q: 「今は核を持つべき時期ではない」どしているが
Ans: 「私は『自主防衛力増強』論者であり、核武装を絶対に否定するつもりもない。将来の選択肢としてなあり得るし、現行憲法下で自衛のための核武装は認められる、と考えている。ただし、今はその時期ではない。もし今、日本の首相が『核武装』を言い出せば、安保闘争以来の国論を二分する大騒動となり、今の政治にこれを乗り切れるだけの『体力』がない、と思うからだ。反対運動を抑えられず、混乱を招くだけの結果になることは目に見えている。
特に政治的な安定がなく、リスクも取らない現政権かでは、核武装の議論をすぺきではない」「さらには、北東アジア地域におけるバランス・オブ・パワーを考えた場合、アメリカはもとより、(友好関係にある)韓国、豪州などの国も今は、日本の核武装に賛成するとは、とうてい思えない。核武装を言い出せば、欧米諸国はたちまち原発の燃料も売ってくれなくなるだろう。日本は孤立するだけだ」
Q: 核兵器の管理体制や判断の前提となる情報の面でも不安が?
Ans: 「法的な整備をはじめ、核を持った場合のノウハウもないし、使用するときのシミュレーションもまったくなされていない。アメリカの大統領は、常に核のボタンを押す覚悟をもっているが、日本の場合、首相の決断を支える人的ネットワークも情報むない。核兵器を持つ前に、まず『戦略を判断する』情報能力を持たねばならない、ということだ。"目に見える情報〃を中心とした極めて"穏当な情報活動〃しか、してこなかった日本にはそれがまるでない」
Q: 核兵器の管理体制や判断の前提となる情報の面でも不安が?
Ans: 「法的な整備をはじめ、核を持った場合のノウハウもないし、使用するときのシミュレーションもまったくなされていない。アメリカの大統領は、常に核のボタンを押す覚悟をもっているが、日本の場合、首相の決断を支える人的ネットワーグも情報もない。核兵器を持つ前に、まず『戦略を判断する』情報能力を持たねばならない、ということだ。〃目に見える情報"を中心とした極めて"穏当な情報活動"しか、してこなかった日本にはそれがまるでない」
「核開発もそう簡単ではないだろう。日本の技術力が高いといっても核兵器の研究者はいないし、核実験もやらねばならない。原発
を造るだけでも地域対策は大変なのに、どうやって説得するのか」
●対米自立の割合増やせ
Q: ではハアメリカの核の傘を信じていればいいか
Ans: 「そうではない。日米同盟を妄信するのではなく、防衛力を強化し、少しずつでも、対米自立の割合を増やしていくべきだ。外交面でもアメリカー辺倒ではなく、韓国などとの関係を一層強化していくことも必要になるだろう」
「ただ、軍事面での自立には段階がある。いきなり核兵器を持たなくても、通常兵器で破壊力のあるミサイルを備える方が国民のコ
ンセンサスは得やすい。核についても、"自前"で持つのではなく、たとえば、核ミサイルが発射司能なアメリカの潜水艦に、海上
自衛隊の高級士官を乗艦させてもらう、といった中間的なステップから始めるべきではないか」
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