水屋神報 第170号平成17年9月26日発行 フランス水屋神社御神殿完成を祝うフランス水屋神社建立実行委員長 吉住 完 かねて計画中の御神殿完成式が八月二十七日 赤桶水屋神社にて執り行われました。当日は晴れ。私は六時起床、身を清め名張より奈良県菟田野町、東吉野村、そして樹氷で名高い高見峠を越えて神社へ向かいました。夏の終わりでしたが高見峠を越えると気温は二十一度、秋を思わせる爽やかさでした。トンネルを抜けると山また山、やがて櫛田川の源流近くに道は合流、清流に沿って走ると神様の懐へ向かう思いでした。事実、この清流にはぐくまれたからこそ水屋の大楠は千年のいのちを今に伝えたのでしょう。そしてこれからも伝えるのです。この水が赤桶の井戸を枯らすことなく湧きつづけます。 日本人は古くから偉大なもの、清らかなものの中に神宿ると信じてきました。そして宇宙と一体、自然と一体の私のいのちに気づいてきました。そのような日本的霊性をこの神殿に託してブルゴーニュに送ろうとしているのです。今地球は危機的状態にあります。このような中で人類が自然と共存していくのは世界の願いです。 宮大工棟梁、板金加工の方々による苦心の作はフランス日本の両国旗に包まれ神社到着、見事な出来栄えを披露しました。たくさんの力で水屋神社拝殿に安置、久保宮司、神職、棟梁、氏子総代、崇敬者代表等などの多数参加の上厳かに完成式典を執り行いました。しかばらくは神社に安置、神域の霊気をしっかり受け取ってフランスへ旅立ちます。一つの思いがたくさんの共感を呼び、形としてここに姿をあらわしました。まだまだ道半ばですが完成を報告して更なる皆様のご協力をお願いする次第です。(神殿写真貼付) ご挨拶フランス光明院 融快 私と妻は 得度を受けて僧侶になってからもう三十年になります。それ以来 日本精神界への知識を深めたいといつも心しております。 特に 大きな神社が好きで よく般若心境をとなえて 祈ったものです。昨年の暮れに 水屋神社と自然の神々の宿る大きな木々を発見して驚きました。私にとってこの出会いは日本の魂により近づくために神道の祈りをとなえるきっかけとなりました。 日本では 昔から人々の幸せをもたらすために 仏教徒神道の教えが仲良く伝えられてきました。以前は 僧侶が寺の側にある鎮守の神社の世話をする事がよくありました。平和で知恵ある世界への正しい道は 我々に食べ物を与え健康を保ち成長し発展させてくれる宇宙の生命の力に深い敬意をもつことであり 日常生活の一刻一刻を聖なるものにするために努力することにあると思います。この宇宙の生命力は現実の世界にも人間の心にも現れていて 密教では大日如来とよばれています。秘伝として伝えられている教えでは天照大神と同体とされています。神仏はいたる所あらゆる物に宿っています。我々も充分清められるとそれを感知することができます。また何らかの象徴的なシンボルをもって人間の心に訴えることもあります。 太陽がきっとこの地上に生命の出現を可能にしたのでしょう。その光は物質と精神を構成する生命を象徴しているのでしょう。 現代では、人間が欲に満ちて傲慢になって物質しか見ずに精神をないがしろにしています。心に和らぎをもたらす自然に宿る神々の存在を感じる心の感受性を失っております。人々の心が受け入れる状態でないと神仏は顕示されません。無知のものが宝石を見分けてそのよさを評価できるでしょうか。宝石箱に入っているからこそダイヤモンドもただのガラスだまと間違えられないということもあります。皆様のご協力でフランス光明院に奉納されることになる神様のお社は当地の日本人たちに日本の伝統に再会キる機会を与えることでしょう。又フランスの人々にはお社の美しさとエレガンスから神道の精神に触れることができると思います。 皆様方の熱意と努力によってこんなにもはやくお社が完成したことに驚き喜んでおります。日本の伝統を伝えて将来には大きな成果をもたらすことを心より願っております。 私は毎晩 大はらいの詞をとなえております。今では神道の祈りが私の心の内に響くように感じられます。実に気持ちのよいものです。いずれは他の人たちと一緒に水屋神社にご縁のあるお社の前で天照大神に祈ることを楽しみにしています。日本の文化を紹介して愛されることを目的とする仏教寺院に神社建設のためご協力くださいましたことにこころより厚く御礼を申し上げますと同時に皆様のお越しをお待ちいたします。 水屋神社 久保憲一宮司 様 フランス水屋神社建立実行委員会理事 漫画家 美内すずえ この度はフランスに水屋神社の分社が建立されるとのこと、御神殿完成まことにおめでとうございます。 最近わたしは、この地球に生きるとはどういうことか、よく考えるようになりました。 今の人類の繁栄は、数多くの自然破壊の上に成り立っています。 かつて古の日本では、山や森や木や岩や、滝や川に、神の霊を感じ、尊く敬うものとしてその御神霊をお祀りしてきました。それは自然の中で生かされていることを知り、感謝と畏れの表れだったのだと思います。利益追求の社会となり、それらの意識は隅に追いやられ、アニミズム崇拝という原始信仰とされて、今や現代社会から無視されつつあります。 そんな中、水を尊ぶ水屋神社の分社がフランスのブルゴーニュに建立されるとは、まことにありがたく、融快、融仙御夫妻様をはじめ、久保宮司様ならびに関係者の皆様には心から感謝申し上げます。 山に降った雨が大地を潤し、森を育て、湧き水となり、川となり、海へ大地の栄養を運んで海に生きるものも育て、また雲となり雨となって山や大地を潤す…。水は地球上の生命の原点です。 「人間は地球に生かされ、育てられている。」 フランスのブルゴーニュから世界にその思いが拡がりますように…。 当日の祝電等 フランス在住・筑波大学名誉教授 竹本忠雄氏から長文の激励祝電が届きました。
哀 悼 白丁の佐々木一さん が逝去されました。昨年の春日大社へのお水送りに参加され、中遷宮の神社境内整備ご奉仕や神社前の巨大赤桶モニュメントの奉納。そして毎正月には鳥居に門松を奉納されていました。まさに様々な分野で公に奉仕された御一生でした。白丁をお引き受けくださりまだ間がないというのに、とても残念です。 |