歴史戦2015.9.10産経新聞
            
国連総長抗日行事出席
     身内からも批判の声 「母国向けのパフォーマンス」

【ニューヨーク目黒沢潤】国連の播基文(パンギムン)事務総長が今月3日、中国の軍事パレードを含む抗日戦争勝利70年記念行事に出席したことに、有識者ら国連周辺から批判の声が出ている。国連の「中立」にそぐわないだけでなく、母国・韓国向けの「政治パフォーマンス」に利用した側面もあるとみられるためだ。

 
国連研究で知られる米コロンビア大のアンドリユー・ネイサン教授(政治学)は播氏の行事出席について、「国連は第二次世界大戦後、戦争の勝者のみならず世界の国々を代表する機関として創設された。国連が戦争の一方の側の記念行事に関与すべきではない」と批判。また、一党独裁国家が最新兵器を披露する場ともなった軍事パレードへの出席について、「パレードは高度に政治化され、勝利主義、愛国主義、軍事強大主義を体現したものだ。

事務総長としてたしなめるべきであり、鼓舞すべきものではない」と強調した。米ニューヨーク大のジェローム・コーエン教授(法学)も、「(安保理常任理事国という)国連内の中国の存在感を考えた場合、行
事出席は避けられなかったかもしれない」と述べつつも、「播氏は(北京滞在中に)中国の大気汚染や(南シナ海での)紛争、サイバー攻撃、人権弾圧といった諸問題に関して、公的に声明を発表すべきではなかったか」と、事務総長としての資質に疑問を呈した。

日本側は播氏の抗日記念行事出席について「懸念」の意を表明していたが、播氏は出席を強行した。欧米の首脳は軒並み欠席。欧州連合(EU)から唯一チェコのゼマン大統領が参加を決めた際、北京駐在のハンス・シュバイスグートEU大使は「この種の軍事パレードには、いつも懸念が伴うということを人々は理解する必要がある」と苦言を呈していた。

さらに、国際刑事裁判所(ICC)から逮捕状が出ているスーダンのバシル大統領らとともに、播氏がパレードを参観したことを疑問視する声も、国連職員から出ている。また、ある国連高官、播氏が抗日記念行事への参加と母国での”政治的野心”を結び付けた可能性を指摘。「韓国の大統領職に意欲を示しているとされる播氏をめぐっては実際、(中国滞在中に)韓国内で好意的に報道されていた」と述べ、播氏が事務総長職を母国での"PR”に事実上利用したのではないかとの見方を示した。

「中立性欠く」自民が抗議文発表

自民党の外交部会などは9日、播基文国連事務総長が中国の抗日戦争勝利70年記念行事に出席したことについて「(事務総長に求められる)中立性を著しく欠くもので、遺憾だ」する文書を発表した行事の目玉が軍事パレードだったと指摘。軍拡路線を肯定したと受け止められ、事務総長としての適格性に重大な疑問を抱く」と批判した。文書は8日付け「