・・・拡大される国連安全保障理事会の常任理事国に推挙され、核不拡散に向け外交力を発揮すべきだ。

領海通過と協力で抑止高めよ

同じ非核国でもカナダは、国内に米軍の早期警戒レーダーなどの設置を受け入れて米軍と共同警備し、北米航空宇宙防衛司令部(米コロラド州、NORAD)などに当直将校を派遣するなど、米国の「核の傘」の信頼性を高めるべく最大限の対米協力をしている。わが国もこれに学ぶべきである。

ドイツ、イタリア、オランダ、ベルギー、トルコの北大西洋条約機構(NATO)加盟5カ国が参画する「共同核保有(Nuclearsharing)」も選択肢の一つだとはいえ、冷戦時には意味があったこの方式も、今はしばしば中止が提起されている。

この方式は、各国国内の米軍基地に、米軍が管理する戦術核を予(あらかじ)め配備して共同訓練もしておき、ソ連地上軍が奇襲的に戦線を突破してきたり戦術核を使用してきたりしたような場合にのみ、これらの諸国がNATOの許司を得てその戦術核を使うというものだ。

戦術核が配備されている陸続きの前記5カ国と、島国の日本とでは軍事的な条件が違う。在日米軍基地に戦術核の配備を認めてまで「核の傘」を担保しなくても、島国のわが国の周辺には、核弾道・核巡航ミサイルを搭載した米国の潜水艦や艦艇が遊弋(ゆうよく)している。

したがって、それらが有事、緊急時に領海を通過できるように日本側が担保することがむしろ緊要で、それには非核三原則を非核二・五原則に改めることが不可欠だ。

わが国はすでにミサイル防衛網を強化しつつあり、状況次第では敵地攻撃能力も整備し得る。その日本が国会をはじめ公開の場でタブーなしで「日本の核」を論じ、日本が核保有へと転換しないようにと、周辺諸国が祈りつつその論議に耳を傾けるような状況もまた一つの抑止力になるであろう。

高いコストを払って独自核を保有するよりも、その分、通常戦力を強化して、その分野で独自性を増し、対米依存度を減らすことの方が、有効かつ現実的である。(しかたとしゆき)産経新聞2011.3.7