平成12年1月10日月曜日 −の宮巡拝 第3号
巡拝の声 諸国一の宮を完拝 千葉県市川市 入江孝一郎 平成十年十一月二十二日、伊勢国−の宮椿大神社の朝拝前に境内をめぐり、神気を痛いように感じた。御神前には昨夜納めた 『全国一の宮御朱印帳』 十冊が三方の上にある。朝拝につづき御祈祷がはじまる。 「全国一の宮百万人巡拝運動成功祈願・・・」と奏上される声に、使命感が湧いてくる。つづいて山本行障害司が、 「景気が悪いといわれ、日本中、元気がなくなっていますが、本日、御朱印帳もできて、全国一の宮百万人巡拝運動成功祈願をしました。道の神である楕大神社からはじまりました。多くの人々が全国の一の宮に巡拝するようになると人が動きます。人が動けば物も金も動くようになり、何よりも心が豊かになります。」 昭和三十年代から何となく一の宮を参拝するようになり、旅に出ると、必ず近くの一の宮に寄り、それを本にして『一宮巡拝の旅』をだした。 振り返ってみると、一の宮の神々にせかされてというか、命じられてきたように思う。 最初に一の宮として意識して参拝したのが大和国一の宮大神(おおみわ)神社である。大和国−の宮というのであるから日本の一の宮かと思った。調べてみると諸国に一の宮があることを知った。大神神社に縁が生じてから何回も参拝した。当時の中山和敬宮司さんとも親しくしていただき、諸国一の宮の連結会をとすすめてみた。 平成三年、全国一の宮会が結成され、平成五年には 『御朱印帳』 の試作品まですすんだ。神様は長い根廻しをさせ、 一昨年の押し迫ったときに準備されたのである。神は人に命じて行わせ、人は歴史に命じられて動くものである。 隗より始めよ、という諺がある。『御朱印帳』をもつての一の宮巡拝をすすめるには、まず自分自身から着手しなければならない。椿大神社で授与していただき、御朱印の巡拝の旅をはじめる。 同じ伊勢国都波岐神社、伊勢神宮内宮・外宮参拝と参拝し、翌朝、鳥羽市安楽島の伊射波(いざわ)神社の宮司宅で御朱印受け、入れ代わりに若い男が入って来た。門前に三菱パジエロの車が止まっている。何気なく運転席を見ると、全国一の宮鎮座地表がある。聞くと結婚して三年目の若い夫婦である。東北から関東の一の宮を参拝して、この連休で伊勢国に来たという。昨夜は二見ケ浦で車の中に泊まり、御迎光を拝んできたという。若い夫婦と同行して伊射波神社に参拝した。細い小道を約二十五分間歩き神前に出る。青年は全国の一の宮を参拝するが、自分と同じ若い人は多勢いるというので心強く思った。 巡拝第二日目にして、若い巡拝者と会うのはまさに奇遇であり、神の配慮としか思えない感動を覚えた。百万人一の宮巡拝実現はそう先きのことではない。 巡拝の時間をつくり休日には一の宮巡拝の旅に出た。自分が志ざせば、「時と費用は神様がつくって下さる」と信じ巡拝を続けた。そして巡拝者が増すにつれ、「一の宮巡拝会」が出来、会報も発行された。 懸案であった三千三米の雄山峰本社にも霧と鳳と雨の中、無事登頂し参拝できた。御朱印帳の巡拝の旅は、修行の旅でもある。 平成十一年十二月十七日、沖縄の波上宮を参拝し、隗より始めた一の宮巡拝の旅はおわった。今年は喜寿というが、全国一の宮の神々から元気をいただいたので元気である。その分、神様に感謝し、全国一の宮百万人巡拝達成し、日 本の危機から脱失を計らないと、坐青春を捧げ戦死した戦中派世代に、あの世で顔を合わせられない。いま古代の神々 のお力が確かに動いている。 |
書籍紹介(神道)のこころ 葉室頼昭著 さきに紹介した 『神道と日本人』 は、不安定であり、得体の知れぬ世相に対して、何かを求めようとする人々の心を捉えたのか、本屋でうず高く積まれているベストセラーである。 今回国紹介するのは、『神道と日本人』 のその前に書かれたものである。この二つの著書によって(神道)というものが、解りやすく理解される。著者は、奈良の春日大社宮司で、その経歴は大阪大学医学部卒の医学博士、外科病院長や葉室形成外科病院を開業のかたわら大阪圏学院通信教育で神職の資格を得て、さらに 神職最高位の明階を取得したのだが、そればかりではない。葉室家というのは、藤原一門で平安時代末期に、葉室家が置かれ、九百余年も続いている公家である。 いま、日本の風景も日本人の心も失われようとしている。 その中で 『廷喜式神名帳』 にある神社、諸国一の宮が、かろうじて、それを継承している。中にわずかではあるが社家が宮司として続いている。 春日大社は、藤原氏族が代々宮司となっている。それを千年余にもわたって継承することは、人間業でできることではない。神様のお力がないとできるものではない。 神様によって決められた運命を与えられた著者が、神様に仕え、豊富な経験から、神様のこころを伝えている。いま、日本人が忘れてしまったのは神様に感謝するこころである。 〈春秋社発行・千八百円税別) |