子供には見せられぬ 政治部長 有元隆志 日本の安全保障政策を転換する大きな節目であるにもかかわらず、目を覆いたくなる議会の状況である。これが「良識の府」「再考の府」いわれてきた参院であろうか。とても子供たちには見せられない光景だ。 参院平和安全法制特別委員会での安全保障関連法案の採決阻止に向け、鴻池祥肇委員長(自民党)に飛びかかった民主党の小西洋之議員。国会前の反対デモに刺激されて、採決を妨害するため国会の通路を占拠した野党の女性議員たち。 デモ参加者たちが民意を代表しているのではない。議会制民主主義国家では、最終的には国会議員の判断によって法律は制定される。その原則が軽視され過ぎている。 産経新聞社とFNNによる合同世論調査をみても、法案の必要性についての理解は浸透してきている。調査では衆院で審議入りしてから毎回、「法案は必要か」との質問を繰り返してきた。「必要」との答えは6月49%、7月42%、8月58%、9月52%rとの結果だった。 一方で、今国会での成立には反対との回答が多かった。国民の理解を得るための政府の努力が足りなかったのは否めない。残念ながら、国会での法案審議は「戦争法案」や「徴兵制」など、現実と乖離した極端な議論が展開された。 16日の地方公聴会で、渡部恒雄東京財団上席研究員が述べたように、こうした議論は「日本の民主的な安全保障の形成を損なうし、周辺国にも不要な警戒を与える」といえる。その大きな要因が憲法解釈の問題だった。 責任の一端は自民党にもある。6月の衆院憲法審査会で、自民党推薦の憲法学者が安保関連法案について「憲法違反」との見解を示し、野党側を勢いづかせたからだ。 民主党の責任も大きい。ある政府高官は野田佳彦前政権時代に、集団的自衛権の行使容認に向け協力を求められたと明かす。民主党内にも現実的な安保政策を模索する向きもあったが、審議には反映されなかった。限定的とはいえ行使容認は、民主党が与党時代に強調した「日米同盟の深化」につながるにもかかわらずだ。 民主党は政権復帰を望むなら共産党と連携していくことがいいのか立ち止まって考えるべきだろう。 国会議員は日本の安全保障に対する責任感を持ち、判断も先送りすべきではない。参院本会議では堂々と賛否を明らかにすべきだ。 |