写真右:「日本の絆の精神は色あせた」と10日付の米紙ワシントン・ポストに寄稿した元同紙東京特派員でブルッキングス研究所フェロー、ポール・ブルースティン氏(60)=神奈川県鎌倉市在住、写=が産経新聞のインタビューに応じ、次のように述べた。

私は、東日本大震災から1年の節目に「昨年の悲劇は日本を停滞から目覚めさせるのに失敗した」と題する記事を寄稿した。自治体のがれき受け入れ拒否問題に触れ、日本国民の連帯意識が失われかけていると指摘したものだ。

震災直後は、国全体が団結するはずだと楽観的だったが、震災前と同じく政治は争いを続け、人々が放射能問題に過度に反応していることに気がめいったことをきっかけにして、こうした記事を書いた。

震災後、多くの外国人が離日し、友人からも「脱出した方がいい」と助言された。だが、放射能問題を徹底的に勉強し、放射性物質はごくごく微量なもので問題ないと理解して、私は家族とともに日本にとどまった。

自分にはとても大切な妻と子供2人がおり、彼女らも同じように理解してくれた。今も福島県産の野菜や米を買い続け、自分ができることで被災地をサポートしている。

ある新聞記事が私の心に残っている。それは、被災した高齢者が「ボランティアの人からおにぎりなどをもらって感謝しているが、私は与えられるよりも社会に貢献したい」と話したことだ。私はこれが日本精神だと思った。

これに対し、被災地に協力したいと言いながらも自分たちに直接影響が及ぶとなると拒否する人もいる。それががれきの広域処理に表れたことが残念だ。私たちは被災地の苦しみを分かち合わなければならない。

日本は必ず困難を乗り越えると確信している。多くの日本人は、東北の人たちが家族を亡くした痛みや家を流された苦しみを理解している。そのうち絆は戻ってくるだろう。

                 

ブルースティン氏は世界経済が専門で、1987年からワシントン・ポスト紙に勤務。90年
から5年間、特派員として東京で暮らし、その後退職。2年前に鎌倉市に移り住んだ。


写真左:児童いじめ「さみしいこと」
シャネル日本法人社長のリシャール・コラス氏(58)"写真"が今月、東日本大震災を題材にした小説「田んぼの中の海」を母国フランスで出版した。欧州の人々に津波被害の実態を伝えるとともに、日本社会が抱える問題を描きたいと筆を執った。

同氏は、多くの自治体が、がれきの受け入れを拒否していることについて「どこに『絆』があるのか」と述べ、震災から1年を経て連帯意識が失われた日本に警鐘を鳴らしている。

コラス氏は震災後、避難所や仮設住宅にメークアップアーティストを派遣して被災者にメークをするなどのボランティア活動に取り組んできた。その中で、震災を忘れたかのような東京の「日常」と、困難な生活を強いられている被災地との差に「日本が2つの世界に分かれてしまった」と感じた。欧米で東京電力福島第1原発事故ばかりが注目されることも執筆の動機になった。

小説は、津波で家族全員を失った漁村の少年と、東京で無目的な人生を送ってきた若者が主人公。2人の対比を通じ、失われつつ「伝統的な日本の価値観」への思いも込めたという。

コラス氏は日本在住歴35年以上の知日家。震災直後の日本社会の連帯を評価する一方、がれきの受け入れ拒否や福島県から避難した児童へのいじめには憤りを隠さない。

「日本人に助け合いの気持ちがなくなっている。それを外国人(の自分)から指摘されるのは、さみしいことです」小説の印税は、被災地の育英基金に全額寄付するという。


情報源:産経新聞H24.3.19
           絆はここにあり