日本国憲法は3日、施行65年を迎えた。自民党、みんなの党、たちあがれ日本の3党が憲法改正草案などを発表し、産経新聞が「国民の憲法」起草委員会を発足させるなど、憲法論議は再び活発化してきた。
しかし、憲法改正案を国民に発議する権能をもつ国会は、国民投票法が結論を出すよう定めた「3つの宿題」について、いまだ解答を示せないでいる。このままでは、憲法改正の是非を問う国民投票を通じて国民が主権を行使する機会が奪われた状況が続くことになる。政治には速やかに結論を出すことが求められている。(内藤慎二)
=2面に「主張」、4面に「謎多い制定過程」、5面に「改憲案3党議員語る」
成人年齢18歳/公務員制限/活用範囲拡大
「3つの宿題」は、昨年11月に始動した衆参両院の憲法審査会などで検討されている。
1つ目は投票年齢の引き下げだ。国民投票法は本則で投票年齢を満18歳以上と定める一方、公職選挙法や民法の成年(成人)年齢なども同様に引き下げるまでは、満20歳以上に据え置くよう定めている。政府は各府省の事務次官らでつくる「年齢条項の見直しに関する検討委員会」で対応を協議中だが、総務省がすべての法令の同時引き下げを訴えているのに対し法務省が成年年齢引き下げで消費者トラブルが増えると懸念を示すなど対立が続いている。政治の指導力が求められるが野田佳彦首相は静観したままだ。
2つ目は、公務員の政治的行為の制限だ。国民投票法は、一般の選挙と違って、国民投票の際には公務員に賛否の勧誘や意見の表明を認めている。しかし「国民投票の際に特定政党への支持や反対を目的とした運動をすれば制限の対象となる」(人事院)。公務員労組などが特定政党を利する活動をしないよう歯止めをかけるのか否か、具体策はまとまっていない。
3つ目は、国民投票を憲法改正以外に活用すべきかどうかだ。民主党は国民投票法の制定時、憲法改正以外のテーマも国民投票にかけていいと主張。一方、自民党には「専門的かつ継続的な検討が必要な案件について、国民が十分な判断をするのは難しく、代議政体にもそぐわない」(幹部)として慎重論が強い。
「3つの宿題」の存在は、民主党が昨年まで憲法審査会始動に応じなかったことに大きな原因がある。
同党内には「宿題のせいでいつまでも国民投票ができないのはおかしい」(幹部)として、国民投票法を改正して「3つの宿題」を棚上げする意見まであるが、党内がまとまる保証はなく、先行きは不透明だ。
国民投票法と憲法審査会
憲法改正手続きを定めた国民投票法は平成19年5月に成立した。それに伴う国会法改正で、憲法改正案を審議する権能を持つ憲法審査会が19年8月、衆参両院に法的には設置された。だが民主党が委員選任などに応じず、休眠状態が続いた。両院とも23年11月に審査会を始動させたが専門家からの意見聴取などが中心で具体的な憲法
改正の論議はしていない。 |
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