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きよう憲法記念日
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日本国憲法は3日、施行69年を迎えた。安倍晋三首相は憲法改正について「私の在任中に成し遂けたい」など積極的な発言を繰り返しており、自民党は憲法改正原案の検討を進める方針だ。民進党は「誤った憲法改正を目指す安倍政権の暴走を止める」と反発を強め、夏の参院選での主要な争点に浮上している。(内藤慎二、力武崇樹)
自民党は憲法記念日にあたって声明を発表した。この中で「憲法は国民自らの手で、今の日本にふさわしいものとしなければならない」と党是である憲法改正に全力で取り組む姿勢を強調した。
これに対し、民進党は談話で「安倍首相は憲法改正への野心を隠さず、夏の参院選は日本政治の分岐点となる」と指摘。共産党も「野党共闘を前進させ、憲法違反の安保法=戦争法を廃止し、立憲主義をとりもどす」と談話で訴えた。
参院選では自民、公明両党とおおさか維新の会などの改憲勢力が国会発議に必要な「3分の2」議席に届くかが焦点となる。産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)が4月下旬に行った世論調査で62・8%の人が改憲は参院選の「重要な争点」と位置付けており、関心も高い。
安倍首相は今年に入ってから「(参院選で)改憲を考える責任感の強い人たちと、3分の2を構成していきたい」などと強調してきた。首相が参院選での争点化も辞さないのは、日本を取り巻く安全保障環境が厳しさを増しているからだ。
中国の海洋覇権追求や北朝鮮の核・弾道ミサイル開発…。特に航空自衛隊の戦闘機による中国機への緊急発進(スクランブル)は、平成23年度が156回だったが、27年度は3・7倍の571回に上った。それでも、憲法9条の下では、空自機から領空侵犯機を撃つことはできない。相手が警告を無視して領空を自由に飛び回っても、攻撃されない限り退去を呼びかけるだけだ。
集団的自衛権の行使を限定的に認める安保関連法が今年3月末に施行されたが、9条が羽交い締めにしているのが日本の守りの実態といえる。
3面に続く
一面から続く
安保・災害対策に追いつかず
「あらゆる軍事手段を繰り出せる相手と対峙しているのに、『自衛隊は土俵の中央で相手を投げてはいけない。土俵際でうっちゃる程度ならいい』と、ハンディキャップを負わされている」
元陸上自衛隊幕僚長の火箱芳文氏はこう嘆く。9条2項は「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」とする。自衛隊を「違憲」とみなす憲法学者は多い。
世論の理解が徐々に進んできた安全保障関連法にしても、冷戦時代の政府の憲法解釈に固執し、廃止を求める声が野党や憲法学界では大きい。今の憲法が、現実の危機に備える取り組みを妨げる方向へ作用しているのは明らかだ。
自衛隊を憲法上、軍隊だと明確化していないことは自衛隊員の身を余計な危険にさらしている。国際平和協力などのために自衛隊が米国や他国の軍隊に対し、物品や役務を提供する「後方支援」は、安保関連法で活動範囲が戦闘現場以外の幅広いエリアに拡大された。しかし、自衛隊員が敵対的な国の軍隊に身柄を拘束されたら、どんな扱いを受けるのか…。
普通の国の軍人であれば捕虜となり、国際法上の保護を受けられるが、自衛隊員は曖昧だ。岸田文雄外相は昨年7月1日の衆院平和安全法制特別委員会で「後方支援は武力行使にあたらない範囲で行われる。自衛隊員は紛争当事国ではないので、ジユネーブ条約上の『捕虜』になることはない」と述べた。
自衛隊員は、同条約が義務付ける、捕虜への人道的待遇が保証されない。自国民である自衛隊員を害するのが、「平和憲法」の実態なのだ。日大教授(憲法学)の百地章氏は「9条2項で自衛隊を『軍隊』と位置付けてこそ、本当の意味で、『切れ目のない防衛』が可能になる。
自衛隊員も万一の際に人道的な扱いを受ける」と指摘し、9条改正の必要性を訴える。憲法に緊急事態条項を設け、大規模自然災害などに対処する態勢をつくることも急務だ。東日本大災害の際に陸幕長だった火箱氏は「各省庁の対応がバラバラで支援物資が十分に行き渡らなかった」と振り返る。
政府が「一時的に、強力に被災者を救う態勢ををとるこたが望ましかった。安全保障も災害対策でも今の憲法は現実に追いついていけない。国民のため、憲法改正が必要なゆえんである。
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