春画掲載4雑誌警視庁が口頭指導
男女の性風俗を描いた江戸時代の浮世絵「春画」。高い芸術性が海外で評価され、国内初の本格的な展覧会も盛況をきたすなど注目が集まっている。一方、春画を紹介するグラビア記事の掲載方法をめぐり、警視庁はわいせつ図画頒布罪に当たる可能性があるとして、週刊誌4誌に口頭指導した。時代背景にも表現方法にも左右される「わいせつ」と「芸術」。その線引きはきわめて微妙だ。(加藤園子)



問題は同時掲載   線引き微妙わいせつ?芸術?
「直接的な性表現も多いが、わいせつさを感じない。芸術的だと思います」東京都新宿区の女性会社員(36)は、春画の展示を見た感想を語る。東京都文京区の「永青文庫」で、著名な浮世絵画家の春画133点が展示された「春画展」(産経新聞社など後援)が始まり、当時最高峰の技術が凝縮された極彩色の作品に多くの人たちが見入っている。

展示は9月19日から始まったが大型連休中(9月19〜23日)には1万4千人以上が来場。女性も多く訪れ、活況を呈している。この「春画熱」を受け、多くの出版社が春画を特集した。その一部に対し警視庁は8〜9月、掲載について配慮を求める口頭指導を行った。

指導したのは、「週刊ポスト」(小学館)「週刊現代」(講談社)「週刊大衆」(双葉社)「週刊あさひ芸能」(徳間書店)ーー四誌。永青文庫の出展作品の一部を紹介するとして、袋とじ企画で作品の解説と画像を載せていた。春画の画像については他の週刊誌や美術誌でも扱っている。今月8日には、文芸春秋社が春画を掲載した週刊文春の編集長を「配慮を欠いた」として3カ月間、休養させる対応をとったことを明らかにしているが、警視庁の指導の有無を分けたのは「同じ誌上でヌード写真などを扱っているかどうか」だった。

「総合的に考慮」
警視庁保安課によると、指導した4誌は春画とは別に、ヌードや下着姿の女性のグラビア写真などを掲載していた。同課は「ヌード写真などもある誌上での掲載であり、(春画の)わいせつ性が強調されていると判断した」としている。

捜査関係者は、今回の指導は、春画単体での評価ではないことを強調する。「春画は国際的な評価も高く、文化的・芸術的価値がある。春画そのものを問題にする気は全くない」と断言し、あくまでヌードとの"相乗効果"でわいせつ性が高まったことを問題視する。

春画には性器が露骨に表現されており、「過激」ととれる作品もあるが、一方で日常風景や四季を表現する調度品なども描かれ、史料的価値も高い。「春画を書き写しただけのイラストでも、特に文化的価値がないと判断すれば、わいせつ物と判断する可能性もある。著名な画家の作品かなど総合的に考慮する」(捜査幹部)きわめて微妙な春画のわいせつ認定。今後、国内展示や出版が増えることも予想されるが、同課は「今後もチェックし、必要によって指導していく」と強調する。わいせつ性を際立たせるような表現では"待った"がかかることもありそうだ。

春画 性の文化を描写した浮世絵のジャンルの一つで、喜多川歌暦や葛飾北斎など有名絵師も手がけた。嫁入り道具や火難避けともされていたが、江戸時代中期以降「風紀を乱す」として繰り返し幕府の規制を受けてきた。明治時代には販売も禁止。平成になって無修正の画集が刊行されるようになったが、展示は自粛が続いていた。昨年まで大英博物館で開かれていた展覧会をきっかけに、国際的なブームとなっている。

ブームが転機に
甲南大の園田寿教授(刑法)の話「同じ絵でも制作の意図や宣伝方法によってわいせつの概念は変わる。警察の指導の是非は、そういった『相対的わいせつ概念』という考えに基づいたのだろう。開催中の春画展も一昔前ならおそらく犯罪だが、わいせつの判断は時代によっても変わる。今回の国内外の春画ブームは、性表現の展示方法をめぐるターニングポイントとなるだろう。