被爆対応策

                福島第1以外冷温停止

         冷却装置の電源確保 明暗


 東京電力福島第1原子力発電所に大きなダメージを与えた東日本大震災。被災地域周辺には同原発の6基を含めて14基の原子炉があるが、福島第1原発以外の8基は15日までにいずれも冷温停止と呼ばれる安定的な状態となった。

 福島第1原発では、稼働中だった1〜3号機が震災で自動停止した。地震と津波で通常の電源と非常用の電源が失われて原子炉を冷やせなくなり、建屋内での水素爆発や炉心を包む格納容器の爆発が疑われるなど深刻な事故を招いた。

 今後、間題となるのは定期点検で停止中だった4〜6号機だ。原子炉が冷えており、当初は安全とみられたが、15日になって、保管中の使用済み核燃料の過熱によるとみられる放射性物質の拡散が観測された。使用済み核燃料は5、6号機でも保管されており、4号機と同様の事故が起こる司能性は否定できない。

 一方、福島第1原発から約10キロ南の福島第2原発は震災で4基の原子炉が自動停止した。その後は非常用の冷却装置が作動。15日に冷温停止状態となった4号機を含め、現在は4基ともに炉内の水の温度が100度未満の安定的状態だ。

 また、約100キロ離れた日本原子力発電の東海第2発電所の原子炉も15日に冷温停止状態となった。東北電力の女川原発も同様。各原発周辺では放射線が観測されているが、これは福島第1から風に乗って届いたものとみられる。

 福島第2原発は福島第1原発と同じ震度6強、東海第2原発と女川原発は震度6弱の揺れに見舞われた。福島第1と明暗を分けた要因は電源が確保できたことや津波被害の大きさによるものとみられている。

ブルから連鎖
リート製の建屋の壁で覆われており、ウランを中心に全部で5つの壁がある、Q 1号機、3号機の建屋を吹き飛ばした水素爆発はどのようなものかA 水面上に出た燃料棒のジルコニウム水素は高温になり、水と触れると酸素を奪って水素を作る。この水素が、圧力容器や格納容器から漏れ出て建屋内側の上部にたまり、何らかの衝撃で爆発してコンクリートの壁を破壊した。ただ、鋼鉄製の格納容器には影響を与えていないとみられる。

【容器に穴】

Q
 2号機の格納容器が損傷したが、どんな危険が想定される
A 故障などによる格納容器の圧力上昇の際に、蒸気を逃す圧力抑制室(サプレッションチェンバー)が損傷したとみられている。下に水がたまっていて、水に溶ける放射性物質の漏洩を防ぐようになっているが、底に穴が開いていれば漏洩は増大する。

Q 燃料棒の2つの壁は大丈夫か
A 1〜3号機のすべてで燃料棒が水面から上に露出した。2号機では長い時間、完全に露出する状態が続いた。燃料棒は水面から出ると温度がどんどん上昇する。ジルカロイの被覆が一部溶けるなどの損傷が生じている可能性がある。

 放射線影響研究所(広島市南区)の中村典主席研究員によると、一般の人が日常生活で受ける自然放射線の量は1年間で1〜2ミリ・シーベルト。健康診断で受ける胸のレントゲン撮影は1回で0.05ミリ・シーベルト程度という。

 同研究所によると、人体は多量の放射線にさらされると、細胞や遺伝子が傷つき、組織や臓器の働きが悪くなるなどさまざまな病気の原因になる。特に新しい細胞をつくるために分裂を繰り返す、皮膚、消化管粘膜、骨髄の細胞への影響が大きいとされる。

 どの程度の被曝で健康被害が出るのだろうか。健康被害が出るのは1度に100ミリ・シーベルトの放射線を全身に浴ぴた場合。500ミリ・シーベルトミザで血中のリンパ球が減少し、7000ミリ・シーベルト以上で100%の人が死に至るとされる。

 中村主席研究員によると、-人間の生殖機能に与える影響は、男性の場合、150ミリ・シーベルトで一時的に精子の数が減少し、3500ミリ・シーベルトで精子がつくられなくなる。女性の場合は3000ミリ・シーベルトで不妊になる可能性がある。

 被曝した場合、まず体の外に付着した放射性物質を洗い流す措置が取られる。体内に入った場合はキレート剤という放射性物質を体外に出す薬が処方される。

 皮膚が被曝した場合、数週間後にやけどのような症状が出る。治療もやけどとほぼ同じ治療が行われる。めまいなど、車酔いのような症状が出る場合もあるが、その際は酔い止め薬の処方や点滴が行われる。胃や腸がただれることもあり、感染症を防ぐための抗生物質を投与することもある。

 問題となるのは被曝が骨髄まで達した場合だ。血液が作れなくなり、死亡の恐れがある。その際は、骨髄移植や膀帯血8さいたいけつ)移植などが必要となる。

情報源:産経新聞h23('11)3.16