歴史認識めぐり"常套手段" 安倍政権を批判  訪中団には懐柔

{北京11矢板明夫】中国の習近平国家主席は23日白民党の二階俊博総務会長が率いる約3千人の訪中団(財界や日中友好団体の関係者らで構成)と面会した際、安倍晋三政権の歴史認識を暗に批判する一方、訪中団のメンバーを「正義と良識のある日本人」などと褒めたたえた。日本政府と一般の国民を切り離す二分論」を展開し、日本の世論に揺さぶりをかけようとする思惑があるとみられる。

習氏「二分論」日本世論揺さぶり
訪中団には懐柔策

目中関係をめぐっては、月末から5月初めにかけて自民党の谷垣禎一幹事長高村正彦副総裁、額賀福志郎元財務相ら日本の要人が相次いで訪中し、それぞれ習主席との面会を求めたが実現しなかった。

2012年11月に中国の最高指導者となった習主席は対日強硬姿勢を崩さず、日本政府要人と会うことを極力避けており、今回の二階氏訪中に関しても、「習主席には会えないのでは」
との見方が出ていた。ところが、習主席は人民大会堂で開かれた日中の交流式典に突然登場し、関係者を驚かせた。

ある中国共産党関係者は「習主席は日本の民間人に『日中関係悪化の原因はす
べて安倍政権にある』と直接強調するのが目的だ」とした上で、「日本の世論を分断し、8月に発表される戦後70年の首湘激話や憲法改正の動きを牽制したい思惑もある」と指摘する。

日本政府と国民を区別する二分論は毛沢東時代からの対日工作の常套手段だ。「諸悪の根源は軍国主義の復活を図る有翼政治家にあり、日本国民は政府に洗脳された被害者だ」という論法で、日本のリベラル勢力などを味方につけることを目的にしているという。

習主席はこの日の講演で、唐代の詩人である李白と、唐で学んだ阿倍仲麻呂との友情などを例に挙け、日中交流には長い歴史があり、今後も民間交流を展開する必要性を強調した。その上で、日中戦争が中国国民に災難をもたらしだだけでなく、「日本国民もあの戦争の被害者だ」と主張わいきょくし、訪中団に「歴史を歪曲する動きに一緒に反対しよう」と呼びかけた。

「首相も喜んでいる」

【北京=沢田大典】自民党の二階俊博総務会長は24日、北京市内で記者会見し、安倍晋三首相の親書を中国の習近平国家主席に手渡した今回の訪中について「(電話で報告した)首相も喜んでおり、一応の成果を挙けた」と強調した。 
 
二階氏は会見で、23日に北京の人民大会堂で開かれた中国政財界との交流会の最中、首相と複数回電話でやりとりしたことを紹介。「首相からは、ねぎらいの言葉があった。帰国後に(詳しく)報告したい」と語った。

また、二階氏は「(日中間で)これからよく知恵を出ししんし合おうという中、日本も真摯に応えていくことが大事だ」とも指摘。政府側に日中関係改善に向け、さらなる努力を促した。同席した経団連の御手洗冨士夫名誉会長は「有意義で充実したミッションだった」と総括した。

習氏は交流会で「日本軍国主義を美化・歪曲しようと寸る言動も許されない」などと述べ、安倍首相が今夏に出戦後70年談話を牽制。これについて二階氏は「日中は環境が違う」とした上で、「世界が注目している。日中問題がいかに重要か十分に分かった上で、首相は考えている」と語った。

二階氏、親書手渡し成果強調