伝え、問題を「国際化」することでロシアを牽制することだ。国連や主要国首脳会議(G8)、アジア太平洋経済協力会議(APEC)など日本の正当な主張を訴えるべき場は少なくない。

☆国際世論に訴えよ

日ソ中立条約を破り対日参戦したソ連軍が択捉、国後、歯舞、色丹の北方四島全島を占拠し終えたのは終戦後の1945(昭和20)年9月4日だ。日本人島民1万7千人は強制退去させられ、戦後65年以上にわたり、ソ連とロシアは「領土不拡大」の国際社会の大原則に違反して北方四島を不法占拠し続けている。

「北方領土の日」は帝政ロシアが四島を日本領と認めて国境を画定し、日露和親条約に調印した1855年2月7日に由来する。にもかかわらず、民主党の鳩山由紀夫前首相が「四島を同時に返せというアプローチであれば、未来永劫平行線のままだ」などと返還運動の足並みを乱しているのは無責任で理解し難い。

前原外相は「政府の考え方では全くない。元首相が政府と異なる、考え方を個人的意見であれ、言うのは控えていただきたい」と厳しく批判した。政府・与党、野党を含めて国民が一枚岩で臨まなければ不法支配は打破できない。

北方領土の正しい歴史を伝えていく教育も大切だ。日本の政治や世論の分断がロシアの常套戦術であることを肝に銘じる必要がある。日本の了解なく北方領土開発に関係した外国企業に制裁を加えるなど、新たな対抗手段の検討もありうる。首相は「日露の経済協力も協議を進めていく」と述べたが、今は経済協力のときではない。北方領土の日本の主権がかつてない危機に瀕していることを首相は強く自覚すべきである。