| 小さな親切、大きなお世話 作家 曽野綾子 (情報源=産経新聞H27.12.13) 「人道主義者」気取る病 マスコミの一部は、今でも日本は格差がひどい国だと言い、それをうのみにした女性たちも「日本は貧富の差がひどいからねえ」と言っている。日本がそんなに格差のひどい国だと思う人は、すぐに「いい国」へ移住してほしい。それを止めるものは何もないからだ。日本は自由な国なのである。今の日本は世界一、格差の少ない、食べられない人のいない国である。たいていの国にはこじきがいて犬を暖房代わりに飼っている。 飼うといっても、犬は自分で餌を拾って食べるのだ。貧困な人の定義ははっきりしていて、今日一日食べるものがない人のことをいうのだが、日本はもしそういう人の存在がわかったら、行政が即刻その苦境を救う豊かな国だ。 しかし最近の日本人は、ひどい精神状態だ、と久しぶりに帰国した人は言う。魂の自立と自律を失っている。夜の電車に乗れば、服装も眼鏡も上等なものを身につけた男が泥酔して眠りこけ、女性の酔っぱらいはミニスカートがずれ上がり足の付け根まで丸見えなので、「風呂敷でもかけてあげたい」そうだ。 何よりも、人の精神をいじけたものにしているのは、立派な学歴を持った人でも「自分を持っている」とは言えないことらしい。彼らは他人と世間の評判を最大の目標にして生き、ことに人権や平等を守るヒューマニストだという評判がほしい。だからSNSの世界と1日中付き合うことに、全神経をかけている。生まれてから一度もその世界とふれたことのない私の暮らし方がいいとは決して言わないが、私でも十分健やかで豊かな人の心と、必要以上の質と量の知識にふれて来られた。 個人情報の秘密を守る、女性に対するいやがらせは許さない、いじめをなくす制度を作る、などは当然のことだが、マスコミ自身が個人情報を暴くことをもって仕事とし、セクハラはいけないという女性が、ちょっとした人間的言動もすぐさま告発の対象にするという非常識を犯す。 自撮りのヌードをSNSに載せた小学生もいた。いじめはその行為をする人間の魅力をそぐ行為だが、どんなに制度を作っても、人の世からいじめはなくならない。教育はそれにうまく対抗できる力を、個人に与えるためにあるのだ。 アメリカではトランプ氏が、「イスラム教徒の入国禁止」を口にしたことに、各国首脳までが批判の声をあげている。「わかりきったことに手を挙げて点数稼ぎなどするな」という感じだ。私たちはすべての人から、もちろんイスラム教徒からも、知恵を習った。一方、トランプ氏といえども思ったことを言う自由はある。 それに反対ならトランプ氏を選挙で大統領にしないよう働く手が残っている。世界中が民主主義の原則を忘れて、人道主義者の評判ばかりほしがる病気に感染している。人道主義というものは、そのために、長時間の労働か、多額の資材か、時には命までも差し出す覚悟を持つことだという。 それなしに口先だけで人道主義を唱える薄汚さは、すぐにばれるものだ。(そのあやこ) |