JICA理事長賞 「心の叫びに耳を傾けて」
頌栄女子学院高等学校 1年 高橋瑞季
自立支援で「共に幸せ」に
「毎日もっと大切に生きていきたい」「自分の為だけではなく人の為に一生懸命になれることを探して、共に幸せになることを考え続けたい」。今年の8月、カンボジアから日本に戻る飛行機の中で私の心は熱く強く叫んでいた。そしてその日以来今日まで、その叫びは消えるどころか益々強くなるばかりである。
この夏、私は大学生や社会人に交じって海外ボランティアに参加する決意をした。カンボジアの村の小学校を訪問し、学校建設や教員の育成、民話の復活に移動図書館の活動等を手がけている日本のNGO団体、シャンティ国際ボランティア会(SVA)の活動に参加するというものだ。
SVAの代表と共に村の小学校の子供達に絵本を届け、絵画、体操、折り紙等を教えることによって、子供達や先生に教育の楽しさや大切さを伝えるという活動内容に、私は強く惹かれた。自分なりにイメージして交流活動に使う物の準備にとりかかる中、村の子供達はクメール語しか話せないと知り、私は本を購入し、クメール語を必死に覚えた。小学生の時にシンガポールに住んでいた為、英語は不自由なくしゃべれる私は、これまで他の言語を頑張って覚えようと思ったことがなかったのだが、今回は違った。クメール語を少しでも覚えて、子供達と目と目を見つめ合って会話したいと真剣に思った。
そして遂に子供達との交流日になった。私達の手渡した絵本を目を輝かせてすぐに読み始める子供達、衛生指導の為に紙芝居を見せながらクメール語も交えて寸劇をした私達を真剣な眼差しで見つめる子供達、そして参加型の桃太郎の劇をした時の生き生きした子供達を見て、私は今まで味わったことのない豊かな気持ちになった。
学校で情操教育の授業がない子供達にそれらを指導した時の弾けんばかりの笑顔は今でも脳裏にしっかり焼き付いていて夢にも繰り返し出てくる程だ。実際に一緒に活動させて頂いて、SVAの活動は、次の世代まで伝えていかなくてはいけないことに対しての立派な手助けをしていると思えた。
今のカンボジアに必要なのは「してあげる」という上から目線のボランティアではなく,「自立を促す」支援なのだと肌で感じた。私は一人でも多くの人に自分の目でカンボジアを見てもらいたいと思う。カンポジア人の心の豊かさに必ず動かされるはずだからだ。それがカンボジアの為になる支援を生んでいくと、心を動かされた一人として、私は大いに期待する。
気持ちの高ぶりを抑えきれず帰国後すぐに私は自分にできることから行動し始めた。貴重なこの夏の体験をこれだけで終わらすわけにはいかなかった。「今後につなげたい」そう叫ぶ私の心に耳を傾け、まずカンボジアでの体験談をまとめ各関係者に感謝の気持ちを贈った。また、カンボジアのことを正確に伝える為にポルポト政権についての本を読み漁った。
親族や近所の人が集まる中、テレビの大画面で写真上映会を開き私の七百枚の写真を見せながら私の見てきたことや感じたことを伝えた。これに関しては今後友人達にも広けたい。そして、私が感銘を受けたSVAの日本での活動を調べ何か協力できないか探したところ、日本の絵本に現地語の訳文シールを貼り、アジア各国に送り届ける活動があることを知った。
私は少しも迷うことなく月に二冊ずつそのお手伝いを始めることにした。初めての作業を終えて最後のぺージに自分の名前をクメール語でサインした時、カンボジアの子供達のきらきらした眼差しを思い出し目頭が熱くなった。私が始めた行動は、ほんの小さなことかもしれないが、カンボジアの子供達の笑顔を思い浮かべながらこれからもずっと続けたい。
そして自分が今より成長したと思えた時、私のたくさんの想いを届けに、また子供達に会いに行きたいと思っている。「また必ず戻ってきてね。」そう言ってくれた子供達の声が今も耳の奥ではっきり聞こえる。
(次回は3月け日に掲載します) 情報源:産経新聞H23.2.26
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