日本は捕鯨を続けるべきだ 調査捕鯨に中止命令 国際司法裁 日本「判決従う」 【ハーグ=宮下日出男】 日本が南極海で実施する調査捕鯨に対し、反捕鯨国オーストラリアが国際捕鯨取締条約に違反するとして中止を求めた裁判で、オランダ・ハーグの国際司法裁判所(ICJ)は31日、日本の調査捕鯨が同条約に違反していると認定し、許可の取り消しと今後の中止を命じる判決を言い渡した。裁判は一審制で上訴はできず、日本の実質的な敗訴。 南極海で調査捕鯨ができなくなる可能性がある。ICJのペテル・トムカ所長は鯨の捕獲数の決定が科学的検討に基づくものとは認められないと指摘。日本の調査捕鯨は同条約8条が認めている「科学的研究目的」の捕鯨には当たらないとした。16人の裁判官のうち賛成12、反対4という投票結果だった。 商業捕鯨のモラトリアム(一時停止)以降、日本は1987年からこの条約の規定を基に南極海で調査捕鯨を実施してきた。国内に流通する鯨肉の2割前後が南極海から供給される。 裁判で、オーストラリアは、日本の調査捕鯨による捕獲枠数が多い上、手法の科学性が不明確だとし、実態は「科学を装った商業捕鯨」だと主張。モラトリアムをうたった取締条約への違反認定や調査捕鯨の即時中止などを求めていた。 日本は調査捕鯨が持続可能な商業捕鯨再開に必要な科学的データの収集が目的で、その成果は国際捕鯨委員会(IWC)で評価されていると主張。菅義偉官房長官は判決について、「残念であり、深く失望している。しかし、日本は国際法秩序と法の支配を重視する国家として判決に従う」との談話を発表した。 裁判は2010年5月にオーストラリアが提訴し、反捕鯨国のニュージーランドも第三国として参加した。日本がICJの裁判の当事者になるのは初めて。 =2面に「科学目的否定」、27面に「納得できない」 捕鯨国・中露も「中止」 日本敗訴 科学目的を否定 【ハーグ=宮下日出男】南極海での調査捕鯨をめぐる国際司法裁判所(ICJ)の31日の判決はオーストフリアの主張をほぼ受け入れた日本の「全面敗訴」といえる結果だった。今後の調査捕鯨の道が完全に断たれたわけではないが、日本の捕鯨政策に大きな影響を与えるのは必至だ。(1面参照) 裁判の対象は南極海で実施中の調査捕鯨で、北西太平洋では継続可能だ。判決は政府が今後、調査捕鯨の免許出す場合は判決内容を踏まえるよう求めており、将来の南極海での調査捕鯨が可能であるとの含みも持たせている。判決は日本の調査捕鯨に科学的研究の性格を持つと一定の理解を示しているがその計画や実施手段が国際捕鯨取締条約で認められた範囲を超える」と指摘。 特に問題視されたのは鯨を殺す致死性の調査手法だ。日本は致死性調査は胃の内容物などの調査に不可欠だと主張したが、判決は日本が別の手段を十分に検討していないとし、オーストラリアの主張を受付入れた。 実際の捕獲数が捕獲枠よりも少ないことも「科学的調査目的」との主張に疑問を投げかけられる原因となった。日本は米反捕鯨団体「シーセパード」の妨害が原因と訴えたが、判決は立証が不十分とした。 オーストラリアが提訴した約4年前、調査捕鯨中止を目指す同国は、機能不全に陥った国際捕鯨委員会(IWC)の議論に業を煮やしていた。IJCに提訴された場合、義務的に応じなければならないとする強制管轄権を認めず、竹島間題の付託を拒否している韓国と異なり、日本は強制管轄権を認めているため受けて立たざるを得なかった。 判事16人のうち反捕鯨国出身は10人。この構成が裁判に不利に働いたと予断はできないが、投票ではオーストラリアの請求を支持した判事12人中、反捕鯨国出身はフランスを除く9人。捕鯨支持国の中国、ロシア請求支持に回った。国際的な法廷の場で下された判決は「客観的判断」として重い。日本の捕鯨を取り巻く環境は厳しさを増すのは間違いない。 |