宇宙の暗黒解明へ一歩 インシュタインの相対性理論とハイゼンベルクらの量子力学を土台に発展してきた。日本も湯川秀樹、朝永振一郎、小林誠、益川敏英の各氏らが大きく貢献し、世界で20人以上がノーベル賞を受賞。1970年代に確立された現在の標準理論は、多くの実験で正しさが厳密に証明されており、人類の英知の結晶といえる。 素粒子は物質をつくる12種類と、物質に力を伝える5種類の計17種類がすでに確認済みだ。しかし、標準理論の重要な骨格となるヒッグス粒子だけが見つからず、半世紀近くにわたり大きな課題になっていた。 標準理論が完成しても、それは素粒子物理学の「第一章」の完結にすぎない。宇宙を構成する物質のうち、標準理論で説明できるのは全体の4%だけで、残りの96%は正体不明の暗黒物質や暗黒エネルギーが占めているからだ。 ヒッグス粒子の性質を詳しく調べれば、暗黒物質の有力候補とされる未知の素粒子の手掛かりが得られる可能性があり、素粒子研究は標準理論の枠組みを超える 世界へ一歩を踏み出すことになる。また、宇宙初期の急膨張がビッグバンの引き金になったとするインフレーション理論でも、ヒッグス粒子は重要なカギを握る。粒子の「発見」は物質や時空の本質に迫る新たな物理学を切り開いていくだろう。(長内洋介) |