平成27年(2015年)5月75日金曜日

       
国際平和支援法案の全文は次の通り。
【第1章総則】

 
目的
 第1条この法律は、国際社会の平和および安全を脅かす事態であって、その脅威 を除去するために国際社会が国際連合憲章の目的に従い共同して対処する活動 を行い、かつ、わが国が国際社会の一員としてこれに主体的かつ積極的に寄与する必要があるもの(「国際平和共同対処事態」)に際し、当該活動を行う諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等を行うことにより、国際社会の平和および安全の確保に資することを目的とする。

 
(基本原則)
 第2条政府は、国際平和共同対処事態に際し、この法律に基づく協力支援活動もしくは 捜索救助活動または重要影響事態等に際して実施する船舶検査活動に関する法律(平成12年法律第145号)第2条に規定する船舶検査活動(国際平和共同対処事態に際して実施するものに限る。

 第4条第2項第5号において単に「船舶検査活動」という。以下「対応措置」という)を適切かつ迅速に実施することにより、国際社会の平和および安全の確保に資するものとする。

 2 対応措置の実施は、武力による威嚇または武力の行使に当たるものであってはならない。
 3 協力支援活動および捜索救助活動は、現に戦闘行為(国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷しまたは物を破壊する行為をいう。以下同じ)が行われている現場では実施しないものとする。ただし、第8条第6項の規定により行われる捜索救助活動については、この限りでない。

 4 外国の領域における対応措置については、当該対応措置が行われることについて当該外国(国際連合の総会または安全保障理事会の決議に従って当該外国において施政を行う機関がある場合にあっては、当該機関)の同意がある場合に限り実施するものとする。

 5 内閣総理大臣は、対応措置の実施に当たり、第4条第1項に規定する基本計画に基づいて、内閣を代表して行政各部を指揮監督する。

 6 関係行政機関の長は、前条の目的を達成するため、対応措置の実施に関し、防衛大臣に協力するものとする。

 
(定義等)
 第3条この法律におい
て次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

 (1) 諸外国の軍隊等
 国際社会の平和および安全を脅かす事態に関し、次のいずれかの国際連合の総会ま たは安全保障理事会の決議が存在する場合において、当該事態に対処するための活 動を行う外国の軍隊その他これに類する組織(国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律=平成4年法律第79号=第3条第1号に規定する国際連合平和維持活動 、同条第2号に規定する国際連携平和安全活動または同条第3号に規定する人道的な国際救援活動を行うものおよび重要影響事態に際してわが国の平和および安全を確保するための措置に関する法律目平成11年法律第60号=第3条第1項第1号に規定する合衆国軍隊等を除く)をいう。

  イ 当該外国が当該活動を行うことを決定し、要請し、勧告し、または認める決議

   ロ イに掲げるもののほか、当該事態が平和に対する脅威または平和の破壊であるとの認識を示すとともに、当該事態に関連して国際連合加盟国の取組を求める決議

 (2)協力支援活動諸外国の軍隊等に対する物品および役務の提供であって、わが国が実施するもをいう。

 (3) 捜索救助活動諸外国の軍隊等の活動に際して行われた戦闘行為によって遭難した戦闘参加者について、その捜索または救助を行う活動(救助した者の輸送を含む)であって、わが国が実施するものをいう。

 2 協刀支援活動として行う自衛隊に属する物晶の提供および自衛隊による役務の提供(次項後段に規定するものを除く)は、別表第1に掲けるものとする。

 3 捜索救助活動は、自衛隊の部隊等(自衛隊法=昭和29年法律第165号=第8条に規定する部隊等をいう。以下同じ)が実施するものとする。この場合において、捜索救助活動を行う自衛隊の部隊等において、その実施に伴い、当該活動に相当する活動を行う諸外国の軍隊等の部隊に対して協力支援活動として行う自衛隊に属する物品の提供および自衛隊による役務の提供は、別表第2に掲げるものとする。

 
【第2章対応措置等】

 
(基本計画)
 第4条 内閣総理大臣は、国際平和共同対処事態に際し、対応措置のいずれかを実施することが必要であると認めるときは、当該対応措置を実施することおよび当該対応措置に関する基本計画(以下「基本計画」という)の案につき閣議の決定を求めなければならない。

 2 基本計画に定める事項は、次のとおりとする。

  (1)国際平和共同対処事態に関する次に掲げる事項

   イ 事態の経緯ならびに国際社会の平和および安全に与える影響

   ロ 国際社会の取組の状況

   ハ わが国が対応措置を実施することが必要であると認められる理由

  (2)前号に掲けるもののほか、対応措置の実施に関する基本的な方針

  (3)前条第2項の協力支援活動を実施
する場合における次に掲げる事項

   イ当該協力支援活動に係る基本的事項
   ロ当該協力支援活動の種類および内容
   ハ当該協力支援活動を実施する区域の範囲および当該区域の指定に関する       事項

   二当該協力支援活動を自衛隊が外国の領域で実施する場合には、当該協力支援活動を外国の領域で実施する自衛隊の部隊等の規模および構成ならびに装備ならびに派遣期間

   ホ自衛隊がその事務または事業の用に供しまたは供していた物品以外の物品   を調達して諸外国の軍隊等に無償または時価よりも低い対価で譲渡する場合には、その実施に係る重要事項へその他当該協力支援活動の実施に関する重要事項


  へその他当該捜索救助活動の実施に関する重要事項

  (4)捜索救助活動を実施する場合における次に掲げる事項
   イ 当該捜索救助活動に係る基本的事項
   ロ 当該捜索救助活動を実施する区域の範囲および当該区域の指定に関する事項
   ハ 当該捜索救助活動の実施に伴う前条第3項後段の協力支援活動の実施に関する重要事項(当該協力支援活動を実施する区域の範囲および当該区域の指定に関する事項を含む)
   二 当該捜索救助活動またはその実施に伴う前条第3項後段の協力支援活動を自衛隊が外国の領域で実施する場合には、これらの活動を外国の領域で実施する自衛隊の部隊等の規模およ
び構成ならびに装備ならびに派遣期間

   ホ その他当該捜索救助活動の実施に関する重要事項

  (5)船舶検査活動を実施する揚合における重要影響事態等に際して実施する船舶検査活動に関する法律第4条第2項に規定する事項

  (6)対応措置の実施のための関係行政機関の連絡調整に関する事項

 3 協力支援活動または捜索救助活動を外国の領域で実施する場合には、当該外国(第2条第4項に規定する機関がある場合にあっては、当該機関)と協議して、実施する区域の範囲を定めるものとする。

 4 第1項および前項の規定は、基本計画の変更について準用する。

 
(国会への報告)
 第5条内閣総理大臣は、次に掲げる事項を、遅滞なく、国会に報告しなければならない  。

 1 基本計画の決定または変更があったときは、その内容
 2 基本計画に定める対応措置が終了したときは、その結果

 
(国会の承認)
 第6条内閣総理大臣は、対応措置の実施前に、当該対応措置を実施することにつき、基本計画を添えて国会の承認を得なければならない。

 2 前項の規定により内閣総理大臣から国会の承認を求められた場合には、先議の議院にあっては内閣総理大臣が国会の承認を求めた後国会の休会中の期間を除いて7日以内に、後議の議院にあっては先議の議院から議案の送付があった後国会の休会中の期間を除いて7日以内に、それぞれ議決するよう努めなければならない。

 3 内閣総理大臣は、対応措置について、第1項の規定による国会の承認を得た日 から2年を経過する日を超えて引き続き当該対応措置を行おうとするときは、当該日    の30日前の日から当該日までの間に、当該対応措置を引き続き行うことにつき、基本計画およびその時までに行った対応措置の内容を記載した報告書を添えて国会に付議して、その承認を求めなければならない。ただし、国会が閉会中の場合または衆議院が解散されている場合には、その後最初に召集される国会においてその承認を求めなければならない。

 4 政府は、前項の場合において不承認の議決があったときは、遅滞なく、当該対応措置を終了させなければならない。

 5 前2項の規定は、国会の承認を得て対応措置を継続した後、さらに2年を超えて当該対応措置を引き続き行おうとする場合について準用する。

 
(協力支援活動の実施)
 第7条 防衛大臣またはその委任を受けた者は、基本計画に従い、第3条第2項の協力支接活動としての自衛隊に属する物品の提供を実施するものとする。

 2 防衛大臣は、基本計画に従い、第三条第二項の協力支援活動としての自衛隊による、役務の提供について実施要領を定め、これについて内閣総理大臣の承認を得て、自衛隊の部隊等にその実施を命ずるものとする。

 3 防衛大臣は、前項の実施要項において、実施される必要のある役務の提供の具体的内容を考慮し、自衛隊の部隊等がこれを円滑かつ安全に実施することができるように当該協力支援活動を実施する区域(以下この条において「実施区域」という)を指定するものとする。

 4 防衛大臣は、実施区域の全部または一部において、自衛隊の部隊等が第3条第2項の協力支援活動を円滑かつ安全に実施することが困難であると認める場合または外国の領域で実施する当該協力支援活動についての第2条第4項の同意が存在しなくなったと認める場合には、速やかに、その指定を変更し、またはそこで実施されている活動の中断を命じなければならない。

 5 第3条第2項の協力支援活動のうちわが国の領域外におけるものの実施を命ぜられた自衛隊の部隊等の長またはその指定する者は、当該協力支援活動を実施している場所もしくはその近傍において戦闘行為が行われるに至った場合もしくは付近の状況等に照らして戦闘行為が行われることが予測される場合または当該部隊等の安全を確保するため必要と認める場合には、当該協力支援活動の実施を一時休止しまたは非難するなどして危険を回避しつつ、前項の規定による措置を待つものとする。

 6 第2項の規定は、同項の実施要領の変更(第4項の規定により実施区域を縮小する変更を除く)について準用する。

 
(捜索救助活動の実施等)
 第8条 防衛大臣は、基本計画に従い、捜索救助活動について、実施要項を定め、これについて内閣総理大臣の承認を得て、自衛隊の部隊等にその実施を命ずるものとする 。

 2 防衛大臣は、前項の実施要項において、実施される必要のある捜索救助活動の具体的内容を考慮し、自衛隊の部隊等がこれを円滑かつ安全に実施することができるように当該捜索救助活動を実施する区域(以下この条において「実施区域」という)を指定するすものとする。

 3 捜索救助活動を実施する場合において、戦闘参加者以外の遭難者があるときは、これを救助するものとする。

 4 前条第4項の規定は、実施区域の指定の変更および活動の中断について準用する 。

 5 前条第5項の規定は、わが国の領域外における捜索救助活動の実施を命ぜられた自衛隊の部隊等の長またはその指定する者について準用する。この場合において、同項中「前項」とあるのは、「次条第4項において準用する前項」と読み替えるものとする。

 6 前項において準用する前条第5項の規定にかかわらず、既に遭難者が発見され、自 衛隊の部隊等がその救助を開始しているときは、当該部隊等の安全が確保される限り、当該遭難者に係る捜索救助活動を継続することができる。

 7 第1項の規定は、同項の実施要項の変更(第4項において準用する前条第4項の規定により実施区域を縮小する変更を除く)について準用する。

8 前条の規定は、捜索救助活動の実施に伴う第3条第3項後段の協力支援活動について準用する。

 
(自衛隊の部隊等の安全の確保等)
 第9条 防衛大臣は、対応措置の実施に当たっては、その円滑かつ効果的な推進に努めるとともに、自衛隊の部隊等の安全の確保に配慮しなければならない。

 
(関係行政機関の協力)
 第10条 防衛大臣は、対応措置を実施するため必要があると認めるときは、関係行政機関の長に対し、その所管に属する物品の管理換えその他の協力を要請することができる。

 2 関係行政機関の長は、前項の規定による要請があったときは、その所掌事務に支障を生じない限度において、同項の協力を行うものとする。

 
(武器の使用)
 第11条 第7条第2項(第8条第8項において準用する場合を含む。第5項および第6項に おいて同じ)の規定により協力支援活動としての自衛隊の役務の提供の実施を命ぜら れ、または第8条第1項の規定により捜索救助活動の実施を命ぜられた自衛隊の部隊等の自衛官は、自己または自己と共に現場に所在する他の自衛隊員(自衛隊法第2条第5項に規定する隊員をいう。第6項において同じ)もしくはその職務を行うに伴い自己の管理の下に入った者の生命または身体の防護のためやむを得ない必要があると認 める相当の理由がある場合には、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で武器(自衛隊が外国の領域で当該協力支援活動または当該捜索救助活動を実施している場合については、第4条第2項第3号二または第4号二の規定により基本計画に定める装備に該当するものに限る。以下この条において同じ)を使用することができる。救助活動を実施している場合については、第4条第2項第3号二または第4号二の規定により基本計画に定める装備に該当するものに限る。以下この条において同じ)を使用することができる。

 2 前項の規定による武器の使用は、当該現場に上官があるときは、その命令によらなければならない。ただし、生命または身体に対する侵害または危難が切迫し、その命令を受けるいとまがないときは、この限りでない。

 3 第1項の場合において、当該現場にある上官は、統制を欠いた武器の使用によりかえって生命もしくは身体に対する危険または事態の混乱を招くこととなることを未然に防止し、当該武器の使用が同項および次項の規定に従いその目的の範囲内において適正に行われることを確保する見地から必要な命令をするものとする。

 4 第1項の規定による武器の使用に際しては、刑法(明治40年法律第45号)第36条または第37条の規定に該当する場合を除いては、人に危害を与えてはならない。

 5 第7条第2項の規定により協力支援活動としての自衛隊の役務の提供の実施を命ぜられ、または第8条第江項の規定により捜索救助活動の実施を命ぜられた自衛隊の部隊等の自衛官は、外国の領域に設けられた当該部隊等の宿営する宿営地(宿営のために使用す区域であって、囲障が設置されることにより他と区別されるものをいう。以下この項において同じ)であって諸外国の軍隊等の要員が共に宿営するものに対する 攻撃があった場合において、当該宿営地以外にその近傍に自衛隊の部隊等の安全を 確保することができる場所がないときは、当該宿営地に所在する者の生命または身体を防護するための措置をとる当該要員と共同して、第1項の規定による武器の使用をすることができる。この場合において、同項から第3項までおよび次項の規定の適用については、第1項中「現場に所在する他の自衛隊員(自衛隊法第2条第5項に規定する隊員をいう。第6項において同じ)もしくはその職務を行うに伴い自己の管理の下に入った者」とあるのは「その宿営する宿営地(第5項に規定する宿営地をいう。次項および第3項において同じ)に所在する者」と、「その事態」とあるのは「第5項に規定する諸外国の軍隊等の要員による措置の状況をも踏まえ、その事態」と、第2項および第3項中「現場」とあるのは「宿営地」と、次項中「自衛隊員」とあるのは「自衛隊員(同法第2条第5項に規定する隊員をいう)とする。

 6 自衛隊法第96条第3項の規定は、第7条第2項の規定により協力支援活動としての自衛隊の役務の提供(わが国の領域外におけるものに限る)の実施を命ぜられ、または第8条第1項の規定により捜索救助活動(わが国の領域外におけるものに限る)の実施を命ぜられた自衛隊の部隊等の自衛官については、自衛隊員以外の者の犯した犯罪に関しては適用しない。

 
【第3章雑則】
 
(物品の譲渡および無償貸付け)
 第12条 防衛大臣またはその委任を受けた者は、協力支援活動の実施に当たって、自衛隊に属する物品(武器を除く)につき、協力支援活動の対象となる諸外国の軍隊等から第3条第1項第1号に規定する活動(以下「事態対処活動」という)の用に供するため当該物品の譲渡または無償貸付けを求める旨の申出があった場合において、当該事態対処活動の円滑な実施に必要であると認めるときは、その所掌事務に支障葬生じない限度において、当該申出に係る物品を当該諸外国の軍隊等に対し無償もしくは時価よりも低い対価で譲渡し、または無償で貸し付けることができる。

 2 政府は、前項の規定により協力を依頼された国以外の者に対し適正な対価を支払う とともに、その者が当該協力により損失を受けた場合には、その損失に関し、必要な財政上の措置を講ずるものとする。

 
(請求権の放棄)
 第14条政府は、自衛隊が協力支援活動または捜索救助活動(以下この条において「協力支援活動等」という)を実施するに際して、諸外国の軍隊等の属する外国から、当該諸外国の軍隊等の行う事態対処活動または協力支援活動等に起因する損害についての請求権を相互に放棄することを約することを求められた場合において、これに応じることが相互の連携を確保しながらそれぞれの活動を円滑に実施する上で必要と認めるときは、事態対処活動に起因する損害についての当該外国およびその要員に対するわが国の請求権を放棄することを約することができる。

 
(政令への委任)
 第15条この法律に定めるもののほか、この法律の実施のための手続その他この法律の施行に関し必要な事項は、政令で定める。

 
付則
 この法律は、わが国および国際社会の平和および安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律の施行の日から施行する。

 ■別表第2(第3条関係)
 ・補給給水、給油、食事の提供ならびにこれらに類する物品および役務の提供
 ・輸送人員および物品の輸送、輸送用資材の提供ならびにこれらに類する物品
  および役務の提供
 ・修理および整備修理および整備、修理および整備用機器ならびに部品および
  構成品の提供ならびにこれらに類する物品および役務の提供
 ・医療傷病者に対する医療、衛生機具の提供ならびにこれらに類する物品およ
  び役務の提供
 ・通信通信設備の利用、通信機器の提供ならびにこれらに類する物品および役
  務の提供