攻撃は戦争犯罪で、平和に対する罪を構成する」との軍事法廷の骨組みが決まってしまった。ニュルンベルク裁判では、この骨格にパリ不戦条約(28年成立)で薄汚い味付けをした。戦争に際し、国家が国際法に基づき犯罪として処罰司能な範囲を広げただけの不戦条約を持ち出したのだ。事後法ではないと強調する隠蔽工作だ。条約が先制攻撃を始めた国家にも権利があるーとも保障している点を無視したこじつけだった。

ニュルンベルク裁判で死刑宣告されたナチスの戦争指導者らはこの「平和に対する罪=A級戦犯」と、大量虐殺など「人道に対する罪=C級戦犯」のダブルで処刑された。

先制攻撃⇔戦争犯罪ではない。
一方、東京裁判では本来、立件しやすい「人道に対する罪」は採用できなかった。「五族協和」を掲げ、ユダヤ人を積極的に保護した国に適用できるはずもない。その代わり、犯罪構成要件と成り得るかも怪しげな「平和に対する罪」だけで裁判を押し切った。

ところで、戦争犯罪委員会において「先制攻撃⇔戦争犯罪ではない」の構図に賛成したのは中国と豪州だけ。そういえば、常軌を逸した復讐劇・東京裁判強行の中心人物は、豪州人裁判長ウィリアム・ウェブであった。

時は流れ昨秋、豪州人ドン・キブラー氏が天皇、皇后両陛下に拝謁した。氏は大東亜戦争中に起きた、日本人将兵による捕虜収容所脱走事件などにおける犠牲者を悼む墓地と、隣接の慰霊日本庭園創設を、私財を投じ奔走した親日家である。

当然ながら、豪州人が全てウェブのように悪辣とは限らない。日本人全てが、野田首相のような変節漢だとは限らぬように。