情報源:壱岐日報 第4276号 平成17年(2005年)11月25日(金)
『マザーテレサ施設 見て聞いて合っての旅』 (1)
スペシャル・サンクス⇒勝本FMパーソナリテイ 斉藤由貴
プロローグ
マザーテレサ、私が彼女と出会ったのは今年の春でした。・・・と言ってもマザーはもう、この世にはいません。ある女性が壱岐へ訪れたこと、それが私にマザーの残した物、それに関わる人々に触れる素晴らしい出会いを与えてくれました。
四町で行われたマザーテレサ写真展。写真家、沖守弘先生が写し出す写真を通じて、マザーテレサに触れ
た方も多かったのではないでしょうか。その写真展の最終は壱岐キリスト教会。この時に、マザーと実際に活動を共にし、私にインドヘ行くチヤンスを与えてくれた是枝律子さんの講演会が行われました。司会の依頼があり引き受けましたが、勝本エフエムの司会者としてだけではなく、それ以上に良い関係を築く事ができた私達は、その時に軽く今年の秋またインドへ行くときには一緒に・・・と言葉を交わしました。
始めは、そんなに深く考えずインド行きを決めた私でしたが、マザーハウス (マザーテレの施設)へ持って行く、オロナイン軟膏・タオル・カーディガンなど、寄付が集まるにつれ、たくさんの方から温かい言葉、気持ちを頂くにつれ、皆の想いをマザーハウスヘ運ぶ架け橋なのだという意識が日に日 に強くなっていきました。不安と期待の混ざったインドへの旅が始まりました。(つづく)
『マザーテレサ施設 見て聞いて会っでの旅』(2)
勝本FMパーソナリティ 斉藤由貴
シンガポール経由でインド、コルカタ(カルカツタ)へ。ここを見ずしてインドを語るな」と是枝さんは言う。一歩ずつ足を踏み入れるたびスパイスの匂いとホコリが、生ぬるいオレンジ色の街灯に照らされ、どんよりとした空気に包まれました。築二百年にもなるホテルで今夜は、お湯が出ないということで顔だけを洗い就寝。翌朝、マザーハウス本部で早朝に行われるミサに、写真で見た青いラインの入ったサリーをまとったシスター達と共に参加。その時、静まりかえった部屋の中に一匹の蝶が・・・・「これは絶対マザーよ!」と是枝さんが私に耳打ちをしましたが、なぜか冷静に頷いてしまいました。
何が起こっても不思議ではないと感じたのです。そして、いよいよ今回の目的でもあるたくさんの荷物をシスターへ手渡し、日本からの寄付は、すぐに使え、お金には変えられない物も多いと受け取っていただきました。この日は”死を待つ人の家”も訪問しましたが、シスターの手を強く握り涙を浮かべた瞳で必死に何かを訴えている老婆の姿が、目に焼きついて離れませんでした……。
マザーテレサ施設見て聞いて会っての旅』B
勝本FMパーソナリティ斉藤由貴
タクシーとバスがひしめき合うインドの街を、枝のような足をぶら下げた赤ちやんを抱えた母親や、まだ小学生にも満たない子供達、どこか身体の一部を失った人達が、物乞いをしてきます。すぐ横を艶やかなサリーの女性が通り過ぎていきますが、その生活を憧れたり望んだりすることはありません。自分の生まれた世界受け止めているのです。むしろ、そんなことも考えてはいないのでしょう。だからこそ、同じインド人に対しても物乞いができるのだと感じました。脳障害児の家(ダヤダン)では、手足・顔が変形し自分で食事もできない子供達すが、ボランティアの方からおかゆ状の物を口に運んでもらっていました。…というでよりも、押し込んでいると言った方が正しいかもしれません。インドでは障害を持って生まれた子は捨てられるケースが多いのです。この日の夜、時間が正確な日本では考えられない、インドでは遅れて当たり前の一時間遅れの電車で一泊。インドで一番大きなUP州、ベナレスヘ。(つづく)
マザーテレサ施設見て聞いて会っての旅』C
勝本FMパーソナリティ斉藤由貴
車窓から差し込むインドの朝日は何だか特別な気がしました。まず向かったのは仏教の開祖であるブツダの博物館などがあるサルナート。以前読んだ手塚治虫が描き出すブツダの世界と重なり少しだけ嬉しくなりました。翌朝、まだ薄暗 い聖なる川″ガンジス″に浮かぶボートの上で、海岸いっぱいにひしめき合う色鮮やかなインドの人達と共に、朝日を待ちました。 小さい頃、図工の時間に筆を一回一回、紙の上に下ろして表現する″点点塗り″という手法を学んだ記憶がありますが、まさに私がこの光景を描くとしたら一点一点違う色彩を使い、その″点点塗り″で描き上げるでしょう。 人々が見つめる先に少しの光が頗を出した瞬間、待っていましたとばかりにガンジス川へ飛び込みます。そして、今日の朝日に祈りを込めるのです。その輝く表情に動かされ私も、とても椅靂とは言えないガンジスに腰から下を沈めてみました。足から伝わってきたのは田植えの時に感じた″ヌルッ″としたあの感触。少しだけインドに近付けたような気がしました。人々をここまでさせるこのガンジス川。この川にはいったい何があるというのでしょうか・・・。(つづく)
『マザーテレサ施設見て聞いて会っての旅』D
勝本FMパーソナリティ 斉藤由貴
ベナレスから再びコルカタヘ向かう駅のホームで遅れた汽車を待つ。そこで今でも強く目に焼きついて離れない光景があります。
トラベルバックを付けるのも嫌なくらい、トイレの匂いに大きなねずみが走り回る、そんなホームの床を一人の少年が四つんばいで這っていました。膝だけ大きく足は細い。骨の形に皮がついています。障害を持ったその少年は足が変形し立つことができず、何年間もこのままの姿で生きてきたのでしょう。健康な身体の人用に設置された水道の水を飲もうと妙な方向に曲がった足を懸命に伸ばし、あの床を這った手で水を汲み口へ。是枝さんがあげたアメを口に含み少しだけ微笑んで少年はゆっくりと四足で離れていきました。次の日には”孤児の家(シシュバン)”へ。ここにも、小さな子供たちがたくさん。マザーがゴミ箱に捨てられていた赤ちゃんを拾ってきたのが始まりの家。保護されてこれから育っていく子供達、駅のホームの少年のようにどんな姿でも何とかしてこれまで生きていくだろう子供達。障害を持って生きる人にとって日本の環境もまだまだ充実しているとは言えないのかもしれません。しかし、それでも恵まれているのだと感じずにはいられませんでした。
『マザーテレサ施設 見て聞いて会っての旅』E
勝本FMパーソナリティ 斉 藤 由 貴
意外と調子の良かった体調も、七日目にして下り気味。慣れない刺激物が多かった為でしょう。 この日は″ハンセン病患者の施設へ。手や足、鼻など身体のどこかが欠けているハンセン病の方が生活している場所。路線を跨いだ場所にあるこの施設は、施設というよりも一つの村のようでした。畑もあり、家畜もいるし、全てを自給自足。 横に長く設計された一階建てのこの施設を見て、是枝さんは以前マザーに聞いたそうです。「なぜこんなに広い土地があるのに二階建てにしないの?」とするとマザーが言った言葉は「人間は年をとっていくのよ。手もない、足も動かない・・・どうやって二階へ登る?」この言葉を聞いて是枝さんは何も返す言葉が見つからなかったそうです。この施設が出来たのが1949年。こんなにも前からマザーの中には”バリアフリー”の心が
あったのだと何度も私たちに話してくれました。リハビリルーム、治療部屋、サリーを織っていたり、米のもみをとっていたり・・・自分にできる事を仕事とし一人一人が生きていることを楽しんでいました。暗いイメージを抱いていた私にとって、皆さんの笑頚が生きる喜びとはなんなのか教えてくれたような気がします。以前は見学も写真も自由だったそうですが、物事を悪い方へ持っていく方もいるそうなので、今回は表情を撮影することができませんでした。少しづつ変わっていく「システムに少し悲しい想いががしました。
『マザーテレサ施設 見て聞いて会っての旅』F
勝本FMパーソナリティ 斉 藤 由 貴
いよいよインドの旅も最終日。この日はゆっくり買い物を楽しみました。日本人だと分かれば、あらゆる所から”チャイ?"”サリi?"と声が飛んできます。そこで見つけたのがインドのCD。「ラジオで流したい!」と2枚購入。そしてマザーテレサの写真を撮り続けた沖守弘先生と合流し、シスターたちが眠っているお墓へ。扉を開けるとそこは木々が生い茂り、オウムなども飛んでくるという・・・。外では物乞いをしてかる人々もいるというのに、まるで別世界。花輪をお供えし最後はマザーハウスベ行き、数日前から展示されたという生前マザーが使用していたペン・サリー・サンダル・部屋などを見ることが出来ました。たくさんの写真なども展示されており、ある1枚の写真の前で立ち止まってしまいました。マザが小さな赤ちゃんを抱いています。マザーの瞳、赤ちゃんの瞳、なぜか涙が込み上げてきました。その隣でマザーの物を静かに見つめる是枝さんの横顔。どんな想いで見ているのでしょうか・・・。私がこの旅で強く感じたのは"マザーテレサ本人とお逢いしたかった!"。自分以外の誰かの為にここまで尽くせる人が本当にいるのだろうか?と、是枝さんがマザーに会いに行ったように……そこに私が見れなかった、感じることができなかったインドがあるような気がします。(おわり)
約25年ぐらい前にパキスタンで同じ経験をしました。今も、昔も、ガンジー(モハメッド・アリ・ジンナー)の時代も変わらない現実。人間とは何物だろうと深く考えさせられました。カーストの世界、カースト以下の人間アチュート(不可触賎民)からバラモンまで、真理の国のインドに??・・・と。パキスタンもそれぞれの国として独立(1947.8.14,5)するまではイギリスのインド植民地でした。インド独立の物語それは、それは壮絶です・・・その話を経験した人からも直接聞きました。・・・お勧めします”インド・パキスタンの独立”「今夜自由を!1&2巻を(D・ラピエール&L・コリンズ 杉辺利英訳 ハヤカワ文庫」。。。あなたならできる、必ずできるの由貴さんの心が更に大きく実を結びますねえ。壱岐の、日本の再発見があることでしょう。
追記:斎藤さん、すばらしいレポートを有難うございました。管理室
参考:ヒンズー教 カースト制度(ヤフー検索から) MOTHER TERESA
HP管理人タケトミ
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