世界の石油開発の動向と環境保護 (情報源:壱岐日報、H16.6.7より)
東京雪州会副会長-(2)
鎮 守 次 郎
※国内陸域の 新地域展開
現在国内における、稼動中の油田・ガス田については、企業を中心に、国の石油・天然ガス開発5ケ年計画の展開とあいまって、積極的に探鉱調査を行っている事も事実である。 今後の採鉱調査地域は北海道の勇払地区を中心とした、石狩平野部、秋田、山形、新潟県の深部グリーソタフ地域が今後も採鉱の重点地域となろう。 北海道地域での天然ガス鉱床の成立条件の研究が積極的に行われてきており、国の基礎試錐による深部調査の結果から、6000㍍以深での石炭層の存在を確認しており、これらの石炭層のあり方と勇払ガス田などのような、白亜紀層の花崗岩内での天然ガス鉱床の成立関係や、物理探査技術の研究が進むにつれ、今後もこの地域は重要採鉱地域となると期待される。
新潟県内でも現在、吉井ー片貝ー南長岡ガス田の深部グリーンタフ地域で、天然ガス・コソデソセートの生産が順調に推移しており、海洋を含めた構造性天然ガス田からの生産が2002年においては、約26億立方㍍の80%を占めているが、今後しばらくは、このような推移をたどると期待されている。これまでも、新ガス田を求めて、石油開発企業は積極的は投資をしてきたが、今のところ新規ガス田は発見されていない。 しかし、まだまだ、一旦発見されると大規模ガス田となりうることもあり、石油開発企業はこうした見地から深部グリーソタフ地域の採鉱活動を引き続き継続してきている。
※国内海域の 新地域展開
わが国においては昭和40年代に入り、秋田県の土崎沖油田、新潟県の頚城沖油田、阿賀沖油田、阿賀北沖油田があり、頚城沖油田では、生産プラットフォームは、4基も存在した。しかし、油田寿命とともに、撤去され、今では、新潟県では岩舟沖油田と福島県の磐城沖油田の2ケ所が稼動中である。
今後もこれら3県にまたがる沖合いについては、国の基礎試錐調査を含め、深部グリーソタフの調査や、洩層の砂岩、凝灰岩層の調査は引き続き行われると思われる。
今後の新しい展開としては、北海道勇払ガス田の発見による画期的な成果をえて、採鉱地域の新たな検討が行われている。さらに1999年に基礎試錐「MITI三陸沖」で、深度約4000㍍(水面下) で構造性天然ガスが発見されている。さらに南方延長に存在する磐城沖ガス田を中心とした、常磐沖地域が存在する。勇払、三陸沖、磐城沖のガス鉱床の成立が上下に胚胎する石炭層とガス鉱床との関係が明確になるにつれ、苫小牧沖、三陸沖、常磐沖にまたがる広大な海域の調査は、業界、国、大学の研究者により、現在積極的に行われており、基礎試錐や民間の試掘井の増加により、本地域が有力な重点地域になることが期待される。
また日本列島を取り巻く南部海域については、静岡県相良沖、中国、山陰地方の沖合い海域、壱岐対馬海峡、日韓大陸棚、宮崎沖、沖縄県諸島沖合い海域が、国は基礎試錐調査を20年以上にわたり、物理探査やそれに伴う試錐作業を実施されてきたが、結果は思わしくなく、調査を継続する話題とはなっていない。
ただ、沖縄県の尖閣列島周辺海域は以前から有望地域との情報や、東シナ海の領海内での有望地域があるといわれているが、隣国との問題もあって、北部海域に比べて、調査活動が停滞していることも事実である。(つづき〉
世界の石油開発の動向と環境保護-5
東京雪州会顧問
鎮 守 次 郎
海外陸域
先進国での環境規制は各国とも、前述のように厳しく管理されているが、産油国でもまだ法制化が遅れている国も多い。 先進国でも広大な、米国、ロシア、中国では奥地の開発は必ずしも厳格に行はれているかは疑問である。
米国アラスカ州での北極圏国立野生生物保護区付近の特別研究区では、トナカイや渡り鳥の通り道にあたり、ここの石油開発をめぐり、自然保護派と開発派で争いが起きている。ブッシュ政権はこれを認める方向で進んでいると聞く。
またこれより以前に同地の近い、ブルードペイ油田開発でも環境保護問題が起きて、結果的にトナカイその他の自然保護のため、特殊パイプライソの敷設で、巨額投資を行っている。 わが国と同様、環境保護には開発途上国でも熱心に取り組んでおり、またこうした国への進出企業も本国並にガス利用技術開発により、環境保護に努めていることは、先のアブダビ海域でガス圧入事業にその例をみることができる。
最も大きな問題は開発に伴う海洋汚染である。今後の未踏地域、大水深地域などでは、新技術が開発途上のものが使用されたり、作業員が充分に機器の取り扱いに習熟していない場合があり、一旦爆噴などが発生すると、遠隔地などであれはその対策に手間取り、過去のような大惨事を引き起こすことになる。またこれは海洋でも陸域でも同様であるが、深部掘削や生産には、H2S(硫化水素)やCO2(二酸化炭素)の濃度が人命への危険値以上に達する場合があり、循環泥水中や、コア採取時にはこれらのモニターについては慎重な上にも慎重でなければならない。
さらに大気汚染防止の面からは、フレヤーガスの放散や焼却は勿論のこと、洋上でのC02については、かん水層への圧入や、風力発電や燃料電池による、動力供給を加味してゆく必要がある。 おわりに 国内外における今後の石油・天然ガス開発の可能性地域について、かなり私見が強くなった感がありますが、小生は長い経験からこのように進むだろうと思います。
技術開発の展望にもふれたいと思いましたが、用語の解説にも紙面もとられますので、開発地域の展望にしぼりまとめてみました。 今後石油は限られた40年程度しか産出しません。出来るだけ、自動車などの燃
料に石油を使わず、他の代替燃料に転換し、石油は化学原料などに集中して使用するように心がけることが、地球環境保護にも大切なことなのです。
自動車も近いうち、燃料電池カーに替わります。発電所も天然ガスやバイオマスに燃料転換がはかられています。太陽電池、風力、地熱などのクリーンエネルギー時代に、もう突入しています。壱岐も周知を集めてエコランドにすれば、新しい観光資源にもなることでしょう。
(おわり)
【鎮守次郎経歴】
▽昭和34年・元帝国石油理事
▽平成11年・前早稲田大学理工学総合研究セソター客員研究員
▽平成15年・現文部科学省、科学計画委員会、汚染・安全防止委員会委員
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