エディタ・グルベローヴァさん
来日15回、最後の日本公演に
「皇后陛下の伴奏 すばらしいピアノでした」

10月下旬から11月上旬にかけて来日したオペラ歌手、エディタ・グルベローヴァさん(65)が東京都内で記者会見し、今回の公演を日本での最後の舞台とすると発表した。日本はウィーンとの時差が大きく、飛行機で移動するたびに体に大きな負担がかかるため。歌手としての活動は今後も続けるという。(櫛田寿宏)

グルベローヴァさんが初来日したのは1980一(昭和55)年。今回を含め来日は計15回に及ぶ。「多くの方にファンになっていただき光栄でした。
日本の観客の皆さんは最高です。あんなにも感動してくれるのですから」と話す。

奈良や京都などの古都を訪れ、日本文化に接したのはいい思い出だという。「桜が満開の季節に来日したこともあります。
美しくて、本当に天国にいるような気持ちでした」と振り返った。

今回の来日では、10月29日に皇居を訪れ、天皇、皇后両陛下の前で歌を披露した。
「私の人生の中で、これ以上望むことのない体験でした。皇后陛下のピアノ伴奏でアベマリアを歌って差し上げ来日15回、最後の日本公演にました。すばらしいピアノでした」

地震が何より苦手だというグルベローヴァさんだが、東日本大震災の記憶がまだ生々しい昨年9月に来日している。「本当のことを言うと、不安で心が揺れていました。でも私は行かなければならないと考えました。日本で観客が待っているのですから。今でも、そう決心できたこと、約束を守れたことを
神に感謝しています」と力強く語った。

70年にウィーン国立歌劇場の
「魔笛」で夜の女王を歌って一躍注目を集め、以来、オペラ界のトップランナーとして活躍している。「ある歌手が注目されると大きな役が付き、一夜で大スターにされ、飛行機に乗って世界中で公演することになる。公演のあとは体を休めなければならないのにそれができなくなる。そしてこの世界を去っていった人を何人も見ている」と話し、自身は「修道女の生活」を送り、心身の健康を守っていることを明かした。

歌い続けるため、6年前にトレーナーの訓練を受けた。以来、歌うときは最初から大きな声を出さず、
声帯のウオーミングアップを30分かけてしているという。「準備をするのはスポーツをするのと同じです」と話し、高音も全く衰えていないことを強調した。